2023年春:最近気になるロードバイク関連のモノ・話題

こんにちは。最近のトピックや業界の話題に触れたりする、四半期に一度くらいの定例企画です。ここ最近業界のあり方が根底から変わっていく動きが見られていて、あらゆるステークホルダーにとって正念場が続いているような状況です。今回はそんな話題を含めてお届け。

text/Tats@tats_lovecyclist

1. 新しい独立系自転車メディア「Escape」登場

米国コロラド州に拠点を置く新しい自転車メディア『Escape』が、今年3月に登場しました。
創設メンバーには、『CyclingTips』『Bicycle Retailer』などを抱えるメディア企業Outside Inc. が昨年行ったリストラで解雇されたエディターやライターが多数参加しています。
このリストラは、広告収入の減少や投資家の厳しい要求に対処するためであり、『Escape』はそんな煽りを食った従来のビジネスモデルから脱却するために、メンバーシップ型の収益モデルを採用しました。
ただし『Escape』は広告を完全に排除するわけではなく、収益の約80%は購読料に依存し、残りの約20%は数社の広告主によってカバーされる予定です

※ちなみに『CyclingTips』は2021年にペイウォールを導入し、毎月一定数以上の記事を読むために課金が必要になっていますが、2年経った今、その仕組みが黒字化に貢献しているとはいいづらい状況のようです。

FAQページに書かれた彼らのアンチテーゼは非常にパンチが効いていて、読んでいてぐっとくるものがあります。以下抄訳で抜粋。

“間違った投資家がビジネスを支配したときに何が起こるかを経験してきた”

“(広告モデルは)どれも似通って底辺を競うようなコンテンツを奨励するビジネスモデル”

“仮想通貨や自動再生の広告が入ることはない”

“クソNFTはない”

『Escape』が完全に広告を排除していないのは非常に重要なポイントだと思います。自転車のようなプロダクト主導の業界ならではの特徴ですが、レビュー用の製品貸与、新製品のニュース提供やイベント招待はメーカーとの共生関係なしには成り立ちません。
メンバーシップの収益を元に発信する情報を選り分け、価値のある製品を提供する広告主だけと繋がることで、読者の望むものを出し続けていく。そうやってうまく収益とアウトプットのバランスをとろうとしていることが読み取れます。

年会費は$99.00(¥13,500) 。CyclingTipsと同様に、一定数以上の記事を読もうとするとペイウォールが発生する仕組みです。僕もメンバーシップに加入しました。すでに6,000人以上の購読者を獲得しているもよう(会員No.=その時点の発行会員数になっている)。

3/17に正式にローンチし、レース系/テック系/ライド系といったカテゴリの記事が少しずつアップされています。どんなスパイスの効いたコンテンツを見せてくれるのかこれから要チェックです。

Escape公式サイト

 

2. ちょっと気になる可愛い小物3選

最近出てきたプロダクトで気になっているもの。

Escapeのバーテープ($55.00 AUD):オーストラリアのウェアブランド「Escape*」のバーテープ。モチーフが可愛い。似たようなラインナップでBurgh Cyclingが好きなので(以前使っていた)、このバーテープも良さそう。
*上に書いた自転車メディアEscapeとは別のブランド

POPのソックスとボトル(£15.00〜):「POP」はソックスやボトルなど小物を展開する英国ブランド。なーんか見たことのあるラグジュアリー系ブランドの柄をモチーフにしていて、パロディっぷりが絶妙で可愛い。

RETROSUPERFUTURE x Brikoのアイウェア(€99.00〜):RETROSUPERFUTUREとBrikoという2つのイタリアンアイウェアブランドがコラボした13種の限定アイウェア。1月に発売されて一部モデルはすでに完売。色使いも形状もクセが強くて可愛い。

 

3. RaphaのCEO & Rapha Japanの代表が辞任

Raphaの創業者サイモン・モットラム氏は、17年間このブランドを率いたのち2021年11月に辞任。その跡を継いだのは、元オールセインツのCEOで、バーバリーやグッチの上級職としても働いていたウィリアム・キム氏です。しかし就任から1年も経たない2022年11月にCEOを退任しました
退任について本人は“個人的な理由”と語っており、家族と過ごすために韓国に移住するとのこと。

そして日本ではRapha Japanの代表矢野氏も同月に辞任。Rapha大阪も2023年4月にクローズとなることが発表されました。

キム氏の在任中に、RaphaはグラベルコレクションやMTBコレクションなどをリリースし、“ロード”サイクリングウェアから“ライフスタイル”サイクリングウェアへとラインナップを拡充してきました。少なくともこの1年で、新しいRaphaの製品ロードマップが示されたように感じられます。

時代をつくってきたこのブランドが大きく変化しているときであり、その変化を近くで感じ続けたいとも思います。

参考:Rapha CEO steps down after less than a year(Bicycle Retailer)

 

4. ヘルメットスタイリングのちょっとした Tips

↑束ねた髪の毛はヘルメットのバックルの間に通す↑

髪の長いサイクリストを撮影するときに、この通し方を初めて知ったというケースが何度かあり、まだ知らない方もいるかもしれないので、トピックとして取り上げました。

髪の毛がバックルの下だと、頭の動きを妨げて邪魔になることがあったと思いますが、間に通すことでヘルメットが動きづらくなり、見た目もすっきりします(バックルまわりの構造も、髪を通すことを踏まえた上で設計されているらしい)。
ただ束ねる位置がシビアなのと、脱着が少し面倒になるので、必ずこれをやるべきという話ではないですが、スタイリングに合わせて試してみてください。

髪が短い場合はヘルメットの穴から出すのが2〜3年前からトレンド(ポガチャル感)

アイウェアをヘルメットの穴に挿すというのも意外と知られていなかったり。こういった周知されていない細かなTipsっていくつもありそう。

 

5. Zwiftがオリンピックeスポーツ2023のサイクリング部門を主催

3月1日に開幕したオリンピックeスポーツシリーズ2023(ほとんど話題になっていませんが…)。現在予選が開催されており、6月にシンガポールで対面での決勝戦が行われます。
対象の種目とゲームは以下の通りで、サイクリング(Zwift)が含まれています。

アーチェリー(Tic Tac Bow)/ サイクリング(Zwift)/ セーリング(Virtual Regatta)/ ダンス (Just Dance)/ チェス(Chess.com)/テコンドー(Virtual Taekwondo)/ テニス(Tennis Clash)/ モータースポーツ(Gran Turismo)/ 野球(WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球)

Zwiftレースは招待制で、「Zwiftグランプリ」と「2023 UCIサイクリングeスポーツ世界選手権」の上位16名(女性8名、男性8名)がシンガポールで男女混合レースの形式で競い合います。
IOCによるオンラインサイクリングイベントは2021年にも行われていますが、これはプロと一般ユーザーが一緒に走るファンライドの側面が強いイベントでした。今回はeスポーツ競技として行われます。

「オリンピックeスポーツシリーズ2023」自体が話題になっていないので、これがコロナ後に低迷するバーチャルライド普及の起爆剤にはならなそうですが、Zwiftはeスポーツのメインプラットフォームとして今後も君臨し続けることとなります。

ちなみにZwiftは3月頭に15%の人員を削減することを発表しています。主な対象となっているのはUKやUSのマーケティングチーム。“今後はソフト・ハード両方の製品開発にリソースを費やす”としていることから、今はマーケットの開拓よりもユーザー体験を最大化するフェーズに入っているもよう。

参照:Zwift to host Olympic Esports Series for 2023(CyclingTips)

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著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。