Text by Tats(@tats_lovecyclist)
サイクルウェアのトレンドを見る上で、3〜4月は各ブランドがSpring&Summerコレクションをリリースする大事な時期。パンデミックの影響でリリースが全体的に遅れていましたが(中にはリリースを見送ったところも)、5月に入りSS20もほぼ出揃いました。
今シーズンも単色系はAW19に引き続きアースカラーやペールトーンがトレンドですが、合わせてパターンやグラフィック系のデザインも豊富。
今のトレンドを表す3つのカテゴリに分けて代表的なものを中心にピックアップします。
Contents
1. サステナブル素材
再生素材を使ったサイクルウェア。環境負荷の低いウェアは、パンデミック前に欧州を中心にトレンドだった“エシカルな消費行動”に適ったプロダクトであり、自転車ウェアにもそういった流れが見られるようになってきました。日本ではこういう取り組みの商品はあまりウケが良くないかもしれませんが、今後最も注目していきたいカテゴリです。
Isadore
Isadoreは早くからリサイクルプラスチックを使ったウェアの制作をしており、「Alternative」ラインとして展開しています。クオリティは通常のラインと遜色なし。
素晴らしいのが、今シーズンからジャージだけでなくビブ・ジャケット・ベースレイヤーまでラインナップされるようになったこと。消費行動の新たな選択肢を与えてくれています。
MAAP
MAAPも再生素材のジャージをメンズ/ウィメンズ各1種リリースしました。品質に妥協なく、通常のMAAPジャージと同じようにハードなライドにも対応可能。
ウィメンズの2トーンデザインは春の華やかさを備えて“再生”に向かう意思を感じさせてくれます。(3月リリースなので在庫僅少)
2. 抽象パターン
おそらくRaphaが2018年にCrit Jerseyに採用したオイルスリック柄がその源泉かと思われますが、クラフト感のある抽象的なパターンデザインはサイクルウェアに新しい印象をもたらしています。今シーズンから更にこのカテゴリは開花していきそう。
Pas Normal Studios
PNSがどうビジネスやウェアを展開していくか、多くのサイクリストが期待を持って見守っていると思います。PNSのクリエイティブディレクターであるカールオスカー氏の名を持つT.K.Oコレクションは今シーズンも目を見張る仕上がりで、水彩のタッチや色調を美しく再現。
Attaquer
ファッション界でも2019年からトレンドになっていたタイダイ(絞り染め)を、Attaquerがサイクルウェアに採用。‘Give ‘em Hell’の精神をかけ合わせ、パンクで自己主張の強さを感じさせるデザインに仕上がっています。
Biehler
Dsgn.Labによるグランジルック(あえて汚い格好をするファッション)のサマージャージ。
デジタル処理によるデザインのため、上記2つのブランドとはデザインに対するアプローチが若干異なりますが、その分鮮やかさが目を引きます。
3. ネイチャーモチーフ
草花など森羅万象を表すネイチャーモチーフは以前から用いられていますが、自然とつながるサイクリングとは相性が良いため、引き続き多くのブランドが採用しています。モチーフもより幅広いところから引用されるようになってきました。
Café du Cycliste
生地やパターンの取り入れ方が最もファッション業界寄りのCafé du Cycliste。
花柄はさまざまなブランドで用いられていますが、バラやジャスミンをモダンなテイストで取り入れ、上質なファッションアイテムとして仕立てるワザはこのブランドしかできないと感じます。
IsadoreやMAAP同様リサイクル素材を用いられていることも素晴らしい。
Café du Cycliste – メンズ | ウィメンズ
Peloton de Paris
PDPのSS20がやっと揃い始めました。
モチーフにしている建築材料のテラゾーは70年代のインテリアで流行し、2〜3年ほど前からリバイバルブームによって再燃しているもの。
ただシンプルなモノトーンではなく、体の表面に表情を与えるマーブルチップがPDPらしいクリーンな印象に仕上がっていて素敵です。
Peloton de Paris – メンズ | ウィメンズ
ENDLESS
“MOONLIGHT”と“SUNDOWN”という2つの空の色がモチーフのENDLESS新作。
グラデーション系のジャージは多々ありますが、空が移り変わるおぼろげな階調の色彩が再現されていて美しい。
Blackmore
Blackmoreは滴の落ちるさまを象形化し、袖やバックポケットに配置したデザイン。
ブランドロゴのカモと相まって、他のブランドとは違った飾り気なしのナチュラルさが引き立ちます。
* * *
身につけるものでモチベートする強さ。
いつもと違う自分になったり、あるいは自分の感情を表現するサイクルウェアは、ライフスタイルにおける”衣服”と同じ社会性を持ち合わせるツール。
それは自分の行動を前進させる役割があります。
そういった意味で、今シーズンに見られる再生素材や色鮮やかなパターンで作られたウェアは、ソロで走り出すモチベーションや、沈みそうな気持ちを持ち上げる力をくれるものだと感じます。
Text by Tats(@tats_lovecyclist)