text by Tats(@tats_lovecyclist)
こんにちは。業界の話題に触れたり内なる物欲をさらけ出したりする、半期に一度くらいの定例企画です。どうぞよろしくお願いします。
ロード乗りにとっての「e-Bike」のポテンシャル
Specialized銀座がe-Bike専門店になり、これを受けて7月頭にメディア向けローンチイベントが開催されました。
「今までの店舗だとどうしても既存のユーザー様の存在感が強く、新規の方が入りづらかった。コンペティティブなバイクを新宿店に集約することで、銀座店はe-Bikeを求めるユーザー様が入りやすい店舗にしたい」
プレゼンの中で最も印象的だったことが、銀座をあえてe-Bike専門店にしたというこの理由。
コロナの影響で通勤目的のクロスバイクタイプが売れているとのことですが、e-Bikeを求めるユーザー像と既存ユーザーがきっぱり別れているというのが現状です。
また、これまでのe-Bikeのマーケティングは「体力の衰えたサイクリストがもう一度ヒルクライムを楽しむため」「ロードバイクに乗るパートナーと一緒に楽しむ女性のための」といった、どちらかというと本流とは少しずれた売り方が一般的でした。
Turbo Creo SL – 従来の「電動ユニットを取り付けた」感がなく、プロダクトとして美しい
だから僕たちロードサイクリストのほとんどにとっては、e-Bikeはまだ気にかける存在にはなり得ないかもしれませんが、それでもロードタイプの美しいe-Bike「Turbo Creo SL」を眺めながら期待したい部分があります。
それは、1日の走行距離が150-200kmが限界のロードサイクリングでも、e-Bikeタイプであればバッテリー面でもアシスト面でもに200km以上走れるポテンシャルを持っているということ。
25km/hを超えるとアシストは切れますが、坂をテンポよくクリアできるようになることで、自然と距離は伸びていきます。
そうなると、コンペティティブな走りを好むロードサイクリストにとって、e-Bikeは“邪道”ではなくなり、本来のロードサイクリングの目的であった「より遠く、より速く」を実現する“正道”のツールとして存在することになります。
そういった使われ方が実践されるようになると、e-BikeはMaaSという概念だけではなく、スポーツモビリティとして認知されるようにもなります。ローンチイベントはそういった未来を感じるような日でした。
Arden Bike – 韓国アパレルが生む若年層カルチャー
韓国のサイクルウェアブランド「Arden Bike」のマーケティングや製品づくりが、欧州ブランドとは対極的でとても面白い。
韓国ファッションは、高品質志向の日本と比較するとファストファッション寄りに最適化されており、日本ほどあまり質を求められていません。「トレンドの服をワンシーズン着られれば良い」という観点で需要と供給が行われています。
サイクルウェアにおいても、Arden Bikeのウェアを見るとその考え方が適用されていることがよくわかります。
デザイン面では、欧州ブランドのようにSSとAWという決まったタイミングでリリースするのではなく、2-3ヶ月おきに新しいデザインを次々と投入。
品質に目を向けると、縫製やパッドなどは優秀とは言い難いですが、ワンシーズン使い倒すという観点で見れば問題ないクラスです。
ジャージもビブも日本円で1万ほどなので、ファッション観点で選ぶにはちょうどよい価格帯。
「韓国のサイクリストはみんなおしゃれ」という声をよく聞きますが、こういったウェアの流通やつくり方を含めて、若年層に最適化されたエコシステムによって日本とは違う状況が生み出されているということを我々は理解する必要があります。
Ardenを着こなすMei
CYCLISMがBlack Sheep Cyclingを取扱開始
CYCLISM取り扱いで、Black Sheepがついに上陸しました。
CYCLISMはMAAPやPeloton de Parisの代理店として知られていると思いますが、ほかにRITTEやOPENといったアメリカ系バイクを取り揃え、国内代理店の中でもハイセンスなブランドを取り揃える随一の代理店へと年々進化しています。
その中へBlack Sheepがラインナップとして加わったことで、少し高嶺にいたオーストラリアブランドがより身近になったことが個人的にも大変うれしいニュースです(早速買い物しました)。
SunGodがロード用アイウェアをリリース
ロンドンのアイウェアブランド「SunGod」。これまでフリースタイルスキーやウェイクボードの選手向けにプロ仕様のゴーグルやサングラスを開発してきましたが、今年7月にロード用アイウェア「Vulcans」と「Velans」をリリースしました。
100%ライクなビックレンズは、カスタムもできて€150。ノーズパッドも4種ついているようで、日本人の顔立ちにもフィットしそう。ブランドの主張がない優れたデザイン、今最も気になっているアイウェアです(ということは…)。日本にも発送可能。
Isadoreがサイクルウェアのサブスクリプションを開始
スロバキアのIsadoreがサイクルウェアのサブスクを開始しました。
対象ジャージ45種の中から好きなウェアを選択し、90日間は好きなだけ着てOK。90日後に返送し、次のジャージを受け取るという流れ(引き続き着たければ返送しない)。
価格は、ジャージ1枚€35/月、ジャージ2枚€60/月、ジャージ4枚€110/月で、通年で前払いすると1ヶ月分無料になります。ただしサービス対象エリアは現状欧州の一部のみで、日本は対象外。
Isadoreは再生素材の導入や布マスクの配布など、ほかのブランドに先駆けて先進的な取り組みを以前から行っています。
今回のサブスクモデルは、3ヶ月ごとに最新ウェアが着られるというメリットだけでなく、ユーザーがサブスクを選択することによって、環境負荷を下げ、資源の節約につながるという素晴らしいアイデア。そして財布にも優しい。ぜひ定着してほしいと思います。
フルーム、来季はISN移籍
ベルナルとトーマスがいる中で、残りのキャリアを過ごすチームはイネオスではないという判断。
資金力のあるイスラエル・スタートアップネーションでアシストが補強され、Factorに乗って勝利するフルームの姿を見るのが楽しみです。
読み応えある新メディア、La route。
以前にJournalでも紹介しましたが、月額¥500の会員制自転車メディア「La route」がスタートし、とても読み応えがあります。
特にバイシクルクラブ編集長との対談「自転車メディアは死んだのか」は、エンターテイメント寄りの岩田氏、カルチャー寄りの吉本氏、機材マニアの安井氏というポジションによる考え方の違いに心揺さぶられる記事でした。
対談中に岩田氏が、バイシクルクラブについて「読者は卒業するもの。常に初心者向けに作っている」という主旨の話をしていましたが、僕自身も当初はLOVE CYCLISTをそういう方針で運営しようと考えていました。しかし続けていくうちに成長の限界点を感じ(そもそもやっていて面白くない)、文字通り“自転車メディアの死”をゆるやかに感じるようになったため、今では積極的に外部との交流を深めながら、僕たちが目指す世界観を反映するメディアであろうと方向性を変えるようになりました。
最近は自転車界だけに関わらず、積極的に読みたいと思えるWebメディアが少なくなっており(優れたクリエイターはYouTubeへ移行しているのもあり)、そういったタイミングで読み応えのあるコンテンツを出すメディアが登場したことはとても喜ばしいことです。