マーケットの軸がグラベルロードへ移っている昨今。
国内は初期市場の段階ですが、グラベルを導入した先駆者はすでに新たなフィールドでライドを楽しんでいて、僕の周りでも、MTBやグラベルを手元に置いて新しいスタイルを始めた仲間がいます。
そういう姿を見ながら、グラベルロードは次のステージを象徴するバイクになり得ることを感じています。ライドスタイルの幅が広がることで、自転車遊びに多様性を生む決定的なトリガーになると。だから最近は、グラベルスタイルで走りたい気持ちが抑えられない。
そんなタイミングで、キャノンデール・ジャパンからTopstone Carbonの試乗車を2台お借りしたので、ほかのオフロードバイクを持つ仲間と一緒にグラベルロードの世界へ飛び込んできました。
Text/Tats
Photo/Tats & Ryuji
Team/Rokuto, Hiroko, Kanata, Ryuji, & Tats
Special Thanks/Cannondale Japan
奥多摩むかし道へ。
選んだフィールドは「奥多摩むかし道」。
従来は旧青梅街道とも呼ばれていた、奥多摩駅から奥多摩湖を結ぶ約10kmの古道。現在はハイキングコースとしてよく利用されており、舗装路と未舗装路が入り混じっています。
Topstone Carbonに乗って
車にバイクを詰め込んで、奥多摩駅近くの駐車場からスタートします。
今回はMTBもあったので車で移動していますが、グラベルロードだけであれば奥多摩駅まで輪行してもOK。
片持ちサスペンションフォークのTopstone Carbon Lefty
僕たちが借りたバイクは、「Topstone Carbon 5」と「Topstone Carbon Lefty 1」。いずれもCannondaleのグラベルロードを代表するバイクで、Leftyはフロントサスペンションが搭載されているため、より荒れたダートに対応できるモデルです。
序盤から面食らう急坂
「むかし道」の未舗装路部分は、いわゆるグラベル(砂利道)もありますが、ほとんどはトレイル(登山道)。
本来グラベルロードを試すなら、河川敷を探索するようなやり方が最適なのかもしれないけれど、どこまで走れるポテンシャルがあるのかを確かめたくて、ハードな道へ。
MTBでは行けても、グラベルでは歩いて進まなければならない箇所が多数あります。危ないところはペダルのクリップを外したりバイクを押したりして慎重に(ロードシューズ非推奨)。
Topstone Lefty試乗車のタイヤはグラベルキングの48c。
空気圧は当初3.0くらいにしていましたが、それでもハンドルは取られるため、さらに空気を抜いて調整しながら進みます。空気圧の感覚がまったく別物すぎて面白い。
むかし道の全長は約10km。舗装路なら信号ストップ含めて30分程度で進む距離なので、グラベルロードならすぐ終わっちゃうんじゃないかと甘く見積もっていましたが、全然甘々でした。
ハンドルを取られないように慎重に進みつつ、バイクを押し歩きつつ、そして道に迷いつつ。想像以上に時間がかかります。
道に集中しているからサイコンの数値を見ることはできないけれど、ときどき気にして速度域を見るといつも10km/h以下。
吊橋を見るとどうしても渡りたくなる
道中には吊橋や神社、馬の水飲み場などもあり、かつては人の往来が盛んだったことを想像させます。
補給ポイントはないのでパンをくわえて進むしかない
合間の舗装路も坂が多いものの、ロードと同じ感覚でスムーズに進めるのは、軽量なグラベルロードならでは。
逆にグラベルやトレイルを太いタイヤで踏み進む感覚は、小さい頃毎週のように田舎の山々を歩いていたときの足の裏の感覚に近いものを覚えます。
下りでLeftyフォークのサスが効く
正直になると、ロードで東京近郊のヒルクライムをして自然の一部に触れるとき、幼少の原体験で得た景色と比べて、どうしても物足りないと感じてしまう自分がいました。綺麗に手入れされた道で得られる都会的な体験のような。
グラベルもトレイルも、もちろん人の手が入った道ではあるけれど、かつて自分の足で踏み歩いたものと同質のものがそこにあります。
それぞれが異なるサイズの「太いタイヤ」とともに
この「タイヤを通して得られる感覚」が、圧倒的に非ロード的なこと。自転車を好きな気持ちと原体験がクロスする感覚に触れるためだけでも、こうした道を通る価値があると感じます。
ハイキングコースなので休憩用のベンチも
道のバリエーションが豊富で飽きることがない
むかし道の終点
グラベル初級者が走るにはむちゃくちゃハードなコースでしたが、その分だけ、できること/できないこと、危険な道/走れる道といった嗅覚が身について、走るだけで経験値が蓄積されていくような道でした。
Re: ゼロから始める自転車探求。
自転車を何年も続けるために欠かせないのは、自分で楽しみ方をクリエイトすること。
走力を上げて、道を探求しながらコミュニティとつながり、互いに影響を与えながら自分のスタイルを作り出していく。
都会で自転車を楽しむのであれば、ロードには何の不満もないし、舗装路は身近で最高のフィールドだし、何年続けていても毎シーズンのように新しい発見もある。それと同時に、自分のスタイルはある程度固まっていきます。
それがバイクを取り替えたときにどうなるか。Topstoneを借りてどこを走ろうか考えたときに、道に対する経験値はゼロからのリスタート。荒れた道のバイクコントロールだってまだまだだし、最適なギアさえわからない。
だから、また自転車をゼロから探求するという楽しみが新たに生まれます。
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でも都市部でグラベルロードを所持したとき、道は舗装路がほとんどだし、自走で行ける場所も限られていくのではないかという疑問もあるのは確か。
次のコンテンツでは、さまざまな条件でTopstone Carbonを試乗した体験をベースに、Topstoneのレビューとグラベルロードに対する考え方について、Ryujiと本音で対談します。
Text/Tats
Photo/Tats & Ryuji
Team/Rokuto, Hiroko, Kanata, Ryuji, & Tats
Special Thanks/Cannondale Japan