Topstone Carbonレビューと、ここから見える「グラベルロード」のポテンシャル。

前記事ではTopstoneに乗ってグラベルロードの世界に飛び込みましたが、僕たちはずっと舗装路を走ってきたため、未舗装路に対する経験値はゼロからのリスタートでした。そしてこれからグラベルロードを導入するサイクリストもほとんどがその状態だと思います。さらに国内の自転車界も、グラベルロードのマーケティングについてはまだ手探りの状態が続いています。これからこのカテゴリはどうなっていくのか?
本記事では、オンロード/オフロード両方でTopstoneに乗ったインプレッション、そしてグラベルロードというカテゴリに対して今感じている本音をRyujiと対談します。

Text/Tats
Photo/Tats & Ryuji
Special Thanks/Cannondale Japan

テストライダー

Tats(@tats_lovecyclist
身長177cm/体重60kg
所有バイク: Factor O2
ロードバイク歴: 8年
Ryuji(@ryuji_ride
身長169cm/体重58kg
所有バイク: Cannondale Supersix EVO Hi-Mod
ロードバイク歴:13年
 

1. Topstone Carbon 5/Topstone Carbon Lefty 1レビュー

Ryuji:Topstone Carbon(以下Topstone)シリーズが最初に出たのは2019年で、リリース当時の衝撃を覚えています。評判も良いし、フォルムも格好良いし、ずっと乗ってみたいという気持ちが強かった。今回「Topstone Carbon 5」を一定期間試乗することができて色々とわかりました。

Tats:Topstone Carbon 5は、Topstoneラインナップの中でも一番バランスのとれた構成ですね。
僕は「Topstone Carbon Lefty 1」をお借りしました。Topstoneシリーズはすべてフレームは一緒で、フォークやコンポーネントでグレード差がある中、「Lefty 1」はよりオフロード寄りのパーツで構成されたモデルです。

片持ちフォークに650Bホイールx48cタイヤがセットされたTopstone Carbon Lefty 1(¥854,700)

Tats:僕はレンタル期間が1週間ちょっとだったけれど、Ryujiくんは長めに借りることができて、トータルで1ヶ月半くらい乗っていたんだよね。

Ryuji:はい、なので色々なスタイルを試すことができました。普段はSupersix Evo Hi-Modに乗っているので、同じCannondaleのバイクと比較するという観点でも見られたと思います。

2×11のGRXコンポで組まれたTopstone Carbon 5 (¥322,300)

「Kingpin」サスペンション

Tats:Topstoneらしさを表す絶対的な特徴に、リアの「キングピン」サスペンションがあります。シートチューブ上の接合部分を起点に、リアステーやシートチューブが最大30mmしなるという。

Ryuji:これが結構いい感じの塩梅なんですよね。サスペンションとは言ってもぐにゃぐにゃ動くわけではなく、比較的大きなギャップに対してしっかり働くという感触です。
そのおかげで、舗装路でパワーをかけて走るときはちゃんと反応してくれて、大きな凹みがあるときやガレた道では、ロードバイクよりもスムーズに感じられる。バランスが良いんです。
Topstoneの乗り心地を体験すると「純粋なロードじゃなくても良い」と思うようになる”、と聞いたことがありますが、その感覚はキングピンが大きく作用しているんだな、ということがわかります。

Tats:荒れた道をいくときも、しっかり体重をかけて踏むと後輪が空転せずにしっかりトラクションがかかるんですよね。キングピンのおかげで路面をちゃんと捉えてくれている感じがある。

フレームの性能

30cで軽快に走れるTopstone

Ryuji:僕はもうちょっとTopstoneフレームの特徴を感じたくて、Supersix Evoに履かせているHollowgramホイール(※タイヤは30c)をTopstoneに付け替えても乗ってみました。そうすることで純粋なフレーム性能の違いを感じることができます。

Tats:僕がロードに乗っているときに一緒に走ったけれど普通に速かったよね…。

Ryuji:そうなんです。舗装路の走行性能も、フレームだけで考えれば普通に良い。もちろん絶対的なスピードという観点で見ると、Supersix Evoの方に軍配が上がるのは当然なんですが、乗り心地とかライド後の疲労感で見ると、Topstoneの快適性が効いてきます。
僕は競技をやっていたので、ライドの内容によってはどうしてもスピード重視で走りたいときがある。そういうときはSupersix Evoを選びましたが、それ以外のライドは積極的にTopstoneを使っていました。

エアロ形状のダウンチューブで高速域にも対応

「Lefty」フォーク

Tats:Lefty1については貸出期間の都合上ライドできるのは2回だけだったので、1回は前の記事のハードな「奥多摩むかし道」、もう1回は自走で行ける範囲の舗装路とグラベル地帯へ行きました。

Ryuji:Leftyは本当に格好良いんですよね。アドベンチャー感溢れる作り込みで、グラベルロードの中でもオンリーワンな感じが出ている。

Tats:やっぱり片持ちフォークの実物を見ると、荒れた路面を攻めてこそ活きるバイクだということがわかります。

Ryuji:フロントサスはどんな感触ですか?

Tats:キングピンと同じで、思ったよりも動きは硬めでした。だからフルサスバイクなんだけど、MTBのようにぐにゃっとは動かない。あくまでグラベルロードとしての使い勝手を追求した上での硬さになっている印象です。
おかげでそれなりに整った未舗装路であれば、大きいギャップを吸収した上でがんがん走っていけそうな感覚がありました。僕自身のオフロードスキルがまだまだなので、完全に攻めきれてはいませんが…。

Ryuji:タイヤの太さも効いてますよね。

Tats:48cはむちゃくちゃ安心感がある。低圧にすると、Leftyフォークもあるおかげで荒れた路面に対する苦手意識が薄れていきますね。「むかし道」のような難易度の高いトレイルでも、「この道行けるんだ」という感覚が次第につかめていきます。ノーマルTopstoneよりも安心して走れるんじゃないかと思います。

Ryuji:舗装路走った感じはどうでした?

Tats:ホイールが650Bだしタイヤも太いので、当然ですが30km/h近くになるともっさりします。ただ低速域や加速は、カーボンホイールなのもあって非常にスムーズでした。「スピードは出さなくていい」という気持ちに自然となる乗り味なので、舗装路はそういうものだとして走ります。
ロックアウトレバーでフロントサスをON/OFFできますが、もともと硬めのサスなので、長時間舗装路を走るとき以外はずっとロックアウトしなくても良いなと思いました。

カーボンホイールが軽くロードに近い感覚で登れる

走行中も操作できるロックアウトレバー

ハンドリングの味付けは少し重めと感じるが、荒れた道を走ったときに安定する

携帯ポンプのススメ

ちょうど良いサイズのfabricミニポンプ

キャノンデール・ジャパンの方に教えてもらったのですが、グラベルで遊ぶときは携帯ポンプを持ち運ぶと良いんです。
舗装路でも空気圧は気にしますが、未舗装路はなおさら路面に合わせて適切な空気圧にする必要がある。
日本の道はどこにアクセスするにしても舗装路が多いので、家から目的地までのアクセスは空気圧を高めにしておいて、グラベル区間に入ったら空気を抜く。また帰り道でポンプを使って空気圧を高くする──こんな運用がポンプひとつあればできます。(Ryuji)

 

2. グラベルロードをどう選び、どう使う?

Cannondaleグラベルモデルのカバー範囲

Tats:総合的に、「Topstone 5」は舗装路/未舗装路ともにバランス良く楽しめるつくりで、「Topstone Lefty 1」はより未舗装路でその性能が活きるという感じでしたね。Leftyはどんな道も走れるけれど、基本楽しいのは未舗装路で、限りなくトレイル寄りの遊び方ができる。

Ryuji:Topstoneで走ってみて改めて思ったんですが、同じ「グラベルロード」というカテゴリの中でもそうやって得意領域が少しずつずれているので、やはりグラベルロード選びって悩みますね。ロードよりもジャンルが細分化されていて幅が広い。Cannondaleのグラベルカテゴリも、2022モデルにグラベルレース向けの「Supersix EVO SE」が追加されて、よりレーシーな選択肢が生まれました。

Tats:Cannondaleの代表的なモデルだけで見ても、それぞれの得意領域を並べると以下のような感じになるかと思います。

Cannondaleのグラベル対応範囲イメージ

Tats:一口にグラベルと言っても、わりと綺麗な道/ガレた道/トレイルに近い道などがあって、どの道を自分のメインフィールドに据えるかで必要なバイクは変わってくるな、と。道に対してグラデーションのようにモデルが配置されているイメージですね。
ただ、これはあくまで「路面」に対してのざっくりした振り分けなので、ほかにも「レース」とか「ツーリング」とか軸はほかにもある。

Ryuji:だから自分の住んでいるエリアにどんなフィールドがあるかとか、どんな使い方/遊び方をしたいかで必要なモデルが絞り込まれていくんだと思います。
僕は来年愛媛に移住するので、今住んでいる東京近郊よりも、近所のフィールドの選択肢がかなり広がります。そうすると、所有するなら乗り心地を重視してTopstoneかTopstone Leftyだな、と。今のSupersix Evoとの2台体制で、未舗装路はすべてTopstoneでカバーするイメージです。
ただTatsさんのように都心に住んでいると、グラベルロードが活きるフィールドへのアクセスがあまり良くないですよね。サイクリングロードの脇道は身近ですが、それこそトレイル寄りのグラベルを求めるとなると、舗装路をかなり走った先にあるか、あるいは車でワープした先か。

Tats:これが日本でグラベルロードが浸透しないと言われる所以ですね。まだ僕の未舗装路経験値が少ないので、フィールドが全くないとは言い切れないけれど、少なくともアクセスは良くない。
ただ「Supersix EVO SE(以下SE)」のような選択肢が出てきたことで、日本におけるグラベルロードスタイルというのがより身近にイメージできるようになったと思っています。
「SE」はSupersix EVOをベースに設計されているので、ホイールを替えてタイヤを32cあたりにすれば舗装路は軽快になるだろうし、手頃な未舗装路も走れる。都市部でグラベルを始めるなら、そんな感じでまずはロードのスタイルから少しはみ出すくらいがちょうど良いんだろうと思います。
遠出してグラベルメインで走ろうと思ったら、完成車についている40cに替えれば良いわけだし。
だから僕がCannondaleのグラベルラインナップの中で選ぶとしたら「SE」ですね。

1バイク×2ホイールスタイル

Ryuji:やっぱりそうですよね。僕がTopstoneレンタル中にライドによってホイールを替えて、37cタイヤと30cタイヤを使い分けたように、1バイク2ホイールというのはひとつの解なんじゃないかと思います
ホイールの付け替えはブレーキパッドの調整が面倒といえば面倒なんですが、1台で何でもこなしたいなら最も予算かけずにできるスタイルですし。ロードと組み合わせれば、タイヤの選択肢は25c/32c/40cみたいに3パターンになって、フィールドに合わせたスタイルが幅広く選べる。

Tats:やはり走行性能ってフレームやホイールも大事ですが、タイヤに依存するところも大きいですからね。
ロード1台だと、今のフレームはタイヤクリアランスが30cくらいまでしかないものがほとんどなので、2ホイールでタイヤサイズを使い分けるようなスタイルはできない。その点グラベルロードのクリアランスはすごく魅力的です。

 

3. グラベルの未来をワクワクして待つ

Ryuji:Topstoneを通してグラベルロード遊びの輪郭がだんだんと見えてきたと思うんですが、問題は今後国内のマーケットに受け入れられていくかですね。

Tats:課題がいろいろとありますね。特に“グラベルロードバイク”という言葉が誤解を生みやすいとは常々思っています。これには2つ理由があって、ひとつは「グラベル=未舗装路を走るためのバイクである」というイメージが付いてしまうこと。どんな道でもどんなスタイルでも走っても良いはずなのに、遊び方がかなり限定的な感じがしてしまう。グラベルロードを紹介するとき、「どこを走るか?」という問題がいつも取り上げられますが、それは半分ネーミングのせいなんじゃないかって。

Ryuji:グラベルロードが誕生したアメリカは、純粋に走りやすいグラベル(砂利道)があるのでそのネーミングでも良いですが、日本にそのままの名前で輸入しても「走る場所ないじゃん」ってなりますよね。

Tats:そうそう、だからメディアやメーカーは、グラベルロードを紹介するならローカライズしたスタイルを提示していく必要があるな、と。
もうひとつは「ロードバイク」という言葉が含まれていることから、あくまでロードバイクをやっている人たちに向けたセカンドバイクとしての選択肢に見えてしまうこと。僕たちはロードをやっているので、次の選択肢としてグラベルという考え方ができますが、それだけだとすごく狭いマーケットになってしまう。

Ryuji:これは新しいカテゴリが出るときの宿命ですが、既存のカテゴリに名前が引っ張られるんですよね。“オールロード”という言葉もありますが、これもロードバイク市場に向けたオルタナティブの意味合いが強い。
以前ラブサイにも出ていただいたライターの吉本さんが仰っていたんですが、「グラベルロードはSUVなんだ」って。この例えにすごくしっくりきています。
がんがん加速できるスポーツカーがロードバイクなら、多目的で遊ぶSUVカーがグラベルバイク。そう聞くとグラベルがすごく楽しそうに、懐が広く感じる。

Tats:SUV良いよね。言葉の選び方ひとつとっても、誰がターゲットになるかの意味合いが変わってくるし、最適なワーディングと遊び方が提示されれば、これからスポーツ自転車を始める人の最初の選択肢にもなり得るだろうなと思います。

Ryuji:僕たちもTopstoneの試乗を通して、グラベルロードは懐が深いことが再確認できたし、この先もっといろんな遊び方を試していきたいという気持ちが強くなりました。ただ色々な道を走るだけでなく、自分たちのスタイル探求を含めて。

Tats:欧米マーケットがグラベルに注力しているということは、日本も近いうちに強い影響を受けることになるだろうし、そのとき自分たちはどこに軸足を置くか、というのが今は求められていると思います。
どう転んでも世界は変化し続けるので、その変化の中ではこれまでのスタイルだけに固執せずに、柔軟に楽しむ姿勢でいたいな、と。

Ryuji:これからくる未来をワクワクして待っているような感じですね。自分のグラベルバイク、手にするときが楽しみです。

Topstone Carbonラインナップ一覧

Text/Tats
Photo/Tats & Ryuji
Special Thanks/Cannondale Japan

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