自転車の楽しみ方が広がる昨今。メンバー、スタイリング、目的、時代性など、違った要素が組み合わさることで、ライドは毎回全く異なるセッションになる。
『Snap Journal(スナップジャーナル)』では、そのときどきの自転車スタイルを残すように、ライドの空気感を感じられるスナップ写真を掲載していく。
今回は千葉のカフェOikazeとコラボし、『百年後芸術祭-内房総アートフェス-』をめぐる特別なライドへ。
Text & Photo / Tats [PR]
内房総アートライドへ行こう。
クルックフィールズから出発
千葉県内房総地域で開催されたアートイベント『百年後芸術祭-内房総アートフェス-』(2024年3月23日〜5月26日)を巡るライドが5/18に開催された。地元の施設や自然を舞台に、さまざまなアート作品が展示されているので、各スポットを自転車で巡りながらライドとアートを一緒に楽しむという贅沢な企画。
走りやすい千葉の道が大好きなのはもちろんのこと、普段のライドにはないアートというエッセンスが加わるから、このイベントは楽しみしかない。
ライドの企画はコミュニティカフェ『Oikaze』オーナーのNobuさん(→)。今回のルートはNobuさんが何度も試走し、裏道をつなげてつくってくれた(走行距離67.1km / 獲得標高463m)。
参加者は17名。3グループに分けて、軽快なペースで走り始める。
最初のスポットは、木造平屋建ての八重原公民館。地元産の山武杉を使い、中庭や池もあって、一般的な公民館のイメージとは違った洗練された空間。ここにはいくつものアートが展示されている。
パフォーマンスアート『おはなしの森』。一枚の絵を描きながら、その場にいる全員で即興の話をつくっていく。
今回はアーティストの佐藤さんが最初に山を描き、それを元に僕らに「次にどうした?どうなった?」と順番に続きを聞いていき、答えた内容を1枚の絵に描き足していった。
できあがったのは、自転車の集団が転げ落ちて車に回収された話…(笑)
枝を揺すって葉っぱを落として作るアート作品も
渡り廊下と中庭のある綺麗な建物
海苔の養殖で栄えた君津。海苔を干す風景をイメージして、鉄を干す作品がつくられている。
備え付けの棒で叩くと音が鳴り、叩いていくと次第に鉄の風合いが出て海苔っぽくなっていく。アート鑑賞者と一緒に、君津の海苔の記憶をつくりだしていく構成が面白い。
君津→富津
君津から富津へ移動していく。田園風景が心地良い
富津海水浴場の近くに展示されている「網の道」。富津の海に面した漁港で、海苔網の道が編まれている。
東京湾の埋立開発によって各地の漁場は失われてきたが、その中でも富津の海苔漁は受け継がれてきた。埋立地を自転車で走りながら、人と海の関係のこれからを想像してみる。
アートのように立てかけられた自転車
少し離れた富津埋立記念館にも複数の作品が展示されている。
鏡面反射している黒い部分はすべて醤油(!)
中でも衝撃的だったのが、この「カタボリズムの海」。部屋一面に醤油が注がれ、アクアラインや工業用埋立地を模した海苔の造形物を浮かべ、東京湾の様子が再現されていた。発酵した醤油のむせ返るような匂いが館内に充満し、ただの和室が異様な空間になっている(管理人の方々は大変そうだった…)。
日が経つごとに匂いも変化し、まるで生きもののように変化していく東京湾の様子が頭に浮かんだ。
富津→木更津
富津から木更津へ。この区間は東京湾岸道路で真っ直ぐ繋がっていて、信号も少ないスピード区間。「千葉のサイクリストはガチ勢しかしない」というのは有名な話だが、ここに来て千葉から参加したサイクリストたちが勢いに乗ってトレインをまわし始める。トップスピードに乗ったと思ったらさらに加速していく集団(写真とれない…)。
脚を使い切った参加者たちと少し休憩してランチへ
のんびり参加者同士でお話する時間も好き
150年以上の歴史を持つ木造建築の紅雲堂書店。東京湾に残る干潟をリサーチし、その風景や生物を題材とした作品が展示される。
木更津→クルックフィールズ
残るルートはクルックフィールズに戻るだけなので、力を出し切るようにペダルを踏んでいく。ここに来て、アートライドに参加したサイクリストたちのバイブスが同調してテンションが最高潮。踏み踏みしまくりで楽し過ぎる。
クルックフィールズに到着。最後は自転車を置いて、園内のアートめぐり。
足元も履き替えてリラックスモード
クルックフィールズ内「地中図書館」へ。この建物自体が面白いが、その中にもガラスビーズをつけた彫刻作品〈PixCell〉が展示されている。木製ハシゴ、溶接マスク、カラスといったモチーフが地上の自然光を浴びて神々しい雰囲気。
常設されている草間彌生アートの前で、みんな集合
楽しみすぎて時間が推してきたので、ダッシュで園内を移動しなきゃ
たくさんの作品があって、時間ぎりぎりまで鑑賞する
締めはソフトクリームよね
→サガンもソフトクリームが好き
アートとライドの絶妙な関係。
地域点在型のアートと自転車は相性が良いだろうと思っていたが、実際に巡ってみると、ただ効率が良いだけではなかった。
作品が展示されている地域を地続きで移動することによって、点と点が線になって、地域の特性(地形や街並みなど)がよりイメージしやすくなる。今回は特に埋立地をテーマにした作品が多かったため、自転車で海沿いを走ることでアートの多様な側面を感じるきっかけになった。
そこにちゃんと踏めるライドが絡むと、脳も脚も刺激してむちゃくちゃ満足度が高い。ガチ勢な千葉サイクリストたちとまた一緒に何かを巡るライドがしたい。
text & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
[PR]提供 / Oikaze(@oikaze_bwc)