【レビュー】Vertex London – ただ速さを追い求めるエレガントなウェア(ジャージ+ビブショーツ)

おしゃれな海外ブランド第5弾で紹介したロンドンのラグジュアリーブランド“Vertex London – ヴァーテクス・ロンドン”。
SS2018コレクション紹介記事で、ミニマルデザインに徹した大人っぽい雰囲気のウェアを見てきました。
しかし削ぎ落とされたデザインであるほど、そのクオリティ自体が明瞭に浮かび上がるもの。それでもこのブランドが敢えてミニマルに寄せていることに対し、どれくらいのクオリティを担保しているのか、そして“ラグジュアリー”と称する由来はどこにあるのかを、実際に使って見ていきたいと思います。

※SS2019最新ウェアのレビューはこちら

※本ウェアはVertex Londonより提供いただいたものです。

今回レビューするウェア

Vertex Pinstripe Jersey

SS18 Pinstripe Jersey – $130.00

Vertex Team Jersey

SS18 Team Jersey – $135.00

Vertex Phantom Bibshorts

SS18 Phantom Bib Shorts – $185.00

1. Vertex Londonが提供する価値

Vertex concept card

ウェアに同封されるブランドコンセプトカード。ここからVertexの価値観が読み取れます。

Vertexが創り出すウェアは、過去のサイクリングカルチャーと現代のファッションの要素からインスピレーションを得ていて、ライダーに最高のパフォーマンスと快適性を提供するためにプレミアムな素材を用いて精巧にハンドメイドされています”(抄訳)

──このことから、末尾に記載されているブランドコピー“JUST GO FASTER”には、「ウェアに対するストレスは感じる必要はないから(そこはVertexが保証するから)君たちはより速く前に進むことだけをただ考えれば良いんだ」という姿勢が感じ取れます。常に速さを追い求めていくサイクリストというストイックな人種にとって、非常に頼もしい設計思想です。

Vertex タグ

すべてのウェアに付けられた“JUST GO FASTER”タグ。

この思想を念頭に、ウェアをひとつひとつ見ていきます。

 

2. SS18 Pinstripe Jersey

Vertex Pinstripe Jersey フロント Vertex Pinstripe Jersey バック

個人的にSS18コレクションの中で一番の推しが、この“ピンストライプジャージ”。深いネイビーのピンストライプ柄がモチーフとするのは、1920年代のメンズファッションです。
第一次世界大戦後にあたる当時は、今日におけるスーツの原型が定まった時代で、誰もが普段着として着用していた唯一の服がスーツでした。
その時代に紳士にとって飽くなきファッションとして定着したものがスーツだったように、僕らサイクリストにとっても不可欠なサイクルウェアにこのモチーフを取り入れることで、いつもサドルの上で過ごす僕らに時空を超えて走り続ける意思を紡いでいくことを勇気づけられるように感じます。

Vertex Pinstripe Jersey 柄

スーツの中でも、ピンストライプというのはエレガントな紳士のスタイルを代表するドレッシーな柄で、実際にネイビーのピンストライプスーツを綺麗に着こなすビジネスマンは本当に素敵だと感じます。
エレガントさ」というのはほとんどのサイクルウェアに欠けている要素のひとつで、その欠けたピースをうまく埋める素敵なパターン選択。

Vertex Pinstripe Jersey ジッパー

生地自体はきめ細かくとてもソフトな肌触り。ナイロンを中心とした化学繊維ですが、袖を通すときにシルクのような滑らかさを感じることができます。
また速乾性が高く、冷却効果を持っているため夏のライドでの快適性を担保してくれます。

Vertex Pinstripe Jersey 襟周り

ジップガードつきの低い襟は、柔らかい生地と相まって首元に優しい感触に。

Vertex Pinstripe Jersey 袖

2つ折りのシンプルな設計の袖口。長すぎずスタンダートなレングスとなっています。

Vertex Pinstripe Jersey 裏面

サイドパネルだけは汗抜けの良いメッシュ素材。それぞれの生地同士を縫い合わせるステッチの精度が高いです。とてもきれい。

Vertex Pinstripe Jersey タグ

“PREMIUM QUALITY”とタグにも記載するように、生地の選択とディティールの処理が高いレベルで組み合わさっています。
取り扱いに関しては、ほかのジャージと同じようにネットに入れて洗濯機にかければ問題ありません(最初の色落ちだけは気にします)。

Vertex Pinstripe Jersey バックポケット1

防水加工が施された4thポケット。iPhoneXくらいの大きさまで入るサイズです。

Vertex Pinstripe Jersey バックポケット2

右ポケットにはイヤホンを通す穴があります。もちろん日本では使いませんが、タイのブランドMUURのジャージにも同様の穴があったり、国によって事情が異なるようですね。

Vertex Pinstripe Jersey 裾

裾のゴム素材は肉厚で、ソフトなジャージの末端をビシっと締めてくれる感触。型押しされたブランド名もさり気なく格好良い。

着用イメージ

Vertex Pinstripe Jersey 着用イメージフロント Vertex Pinstripe Jersey 着用イメージバック

サイズ:S(身長177cm/胸囲86cm)

着用するとわかりますが、サイクルジャージっぽくないと感じると思います。それだけ綺麗なピンストライプと装飾を限りなく省いたシルエットが洗練された印象をもたらします。

もちろんパフォーマンス面でも、タイトなレースフィットとエアロダイナミクスを考慮した凹凸のない設計で、機能性を重視するサイクリストにとっても納得できる完成度。
それでも決して体を締め付けることはなく、滑らかに肌を包み込んでくれます(着た上からジャージを撫でるとすべすべして気持ちいい)。着た瞬間に「これはいい」とため息が出るレベル

間違いなくVertexのアイデンティティを代表するウェアと言っても良いジャージです。

SS18 Pinstripe Jersey – $130.00

 

3. SS18 Team Jersey

Vertex Team Jersey フロントVertex Team Jersey バック

“チームジャージ”はVertexの中で最もベーシックなラインです。左腕にあしらわれているのは、Vertexのtwo-stripe柄(ロゴの“V”にこの2本ストライプがデザインされています)。
チームジャージはピンストライプジャージよりも$5.00だけ高価な価格設定となっており、生地やつくりの異なる部分がいくつかあるため、そのあたりを中心に見ていきます。

Vertex Team Jersey 生地

ピンストライプよりも少し厚みとハリのある生地。そのため、前者が「超滑らか」だったのに対し、チームジャージは「普通に滑らか」という感触。強度に対する安心感はこちらの方が大きいかもしれません。

Vertex Team Jersey ジッパー周り

ジップガードが同様についていますが、こちらはピンホールが空いていて、生地が厚い分通気性を考慮するという細かい配所が見て取れます。

ジッパーの動き

ちなみにチームジャージだけジッパーが特殊仕様になっていて、取っ手を持ち上げても自動的にフラットポジションに収まる斬新なつくり。

Vertex Team Jersey 袖

袖の2本ストライプはプリントではなく、白い生地を裏側から縫い合わせているものです。

Vertex Team Jersey 背面

縦に真っ直ぐあしらわれた背面のストライプラインはリフレクティブペイント。ライトが当たると反射板のように光るため、真っ黒なジャージでもしっかり視認性を高めるように考えられています。

着用イメージ

Vertex Team Jersey 着用イメージフロント Vertex Team Jersey 着用イメージバック

サイズ:S(身長177cm/胸囲86cm)

シルエットはピンストライプと同じで、スマートな印象も変わりません。どちらかと言うとこちらの方が幅広い年齢層に合うデザインです(ピンストライプはある程度年を重ねた紳士が似合う)。

着心地の素晴らしさや速乾性はピンストライプジャージ、耐久性の高さや視認性はチームジャージの方が優れていると言えます。いずれも素材に合わせて丁寧に設計されていて、着ると非常に心が沸き立つジャージです。

SS18 Team Jersey – $135.00

ちなみにいずれのジャージも、サイクルジャージには珍しくブランドロゴがプリントされていません。この意図は、ブランドではなく商品そのものを感じてほしいというVERTEXの意思が表われているように感じます。
もともとRaphaのようにシンプルを信条とするブランドは、メーカーの広告塔のように色々なロゴが貼り付けられたチームジャージのアンチテーゼとして生まれたものでしたが、自社ブランドのロゴまでは外すことはできませんでした。
しかしそれらを超越し、自身の訴求までぎりぎりまで抑えるVERTEXのストイックさには、敬意を抱かざるを得ないほどです。

 

4. SS18 Phantom Bib Shorts

Vertex Phantom Bibshorts フロント1

サイズ:S(身長177cm/ウェスト74cm)

Phantom(まぼろし)という名前は、そこにビブショーツが存在していないかのような履き心地を提供するというコンセプトから来ているように感じます。
ペダリングを妨げてはいけない、そしてパッドによる快適性を担保しなければならない──そういった当たり前に実現するべきビブショーツの設計を丁寧に実現しているファントム・ビブショーツ。
タイトフィットですが履き心地は良く、裾周りも無理のないホールド感が再現されています。

Vertex Phantom Bibshorts フロント2

ビブショーツの中では丈が長く、膝上まで覆うことで腿全体の筋肉をサポートするようなつくり。
そして黒く艶やかに反射するVERTEXの文字。この幻影のようなさり気なさはWarsawのビブと同様、非常に格好良いのです。

Vertex Phantom Bibshorts タグ

タグまでいちいち格好良い半透明。Made in PRC(中華人民共和国)ですが、英国デザインによるクオリティコントロールはしっかりされていることを感じます。ちなみにウェアは香港からの発送。

Vertex Phantom Bibshorts 裾

裾には細かいドットのシリコングリッパーがついており、ベタつかずしっとりと太もも周りをホールドします。

Vertex Phantom Bibshorts 肩紐

2本ストライプがデザインされた、頑丈なビブ。

Vertex Phantom Bibshorts パッド1
Vertex Phantom Bibshorts パッド2

シャモアパッドは安定のCytech社製。この形状は“Endurance 3”というラインナップで、文字通り7時間以上のライドに対応できる長距離用のパッドです。VERTEXオリジナルのブラック仕様で、ブレないPhantomの世界観を表現。
このパッドは後ろ側が厚めに出来ていて、実際の長距離ライドでも違和感が出ないのはもちろん、ハイケイデンスで平坦を走り続けても、安定して回し続けられることを確認できています。

幅広いライドに対応できるパッドを備えていることに加え、どんな柄のジャージとも合わせやすいデザインのため、とても汎用性が高いビブショーツに仕上がっています。

SS18 Phantom Bib Shorts – $185.00

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ウェア全体を通して感じるのが、「VERTEX的世界観」を表現するために、徹底したモノづくりを行っているということ。自身をラグジュアリーブランドと冠するのは、高級アパレルブランドに共通するストイックなまでのこだわりの姿勢があるからだと思います。
そういった姿勢と、自分を追い込んでさらに速くなることを宿命的に実践しているサイクリストとの親和性はとても高く、苦しさの果てにある喜びを自身の着るものが支えてくれる──それがVERTEXの言う“JUST GO FASTER”の価値なのだと思います。

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Vertex SS18 mens5Vertex London公式サイト(メンズ/ウィメンズ)