
頭部をスマートにプロテクト。
近年のヘルメットの進化は目覚ましく、安全性・快適性・エアロといった性能面に合わせ、デザインもよりスマートになっています。だからヘルメットはただの機能性アイテムではなく、ファッションの一部として選ぶことができるプロダクト。
そこで自分に合ったヘルメット選びのために、選び方のポイントと価格帯別に最適なモデルを紹介します。
*本記事は2019年更新記事を現状に即して改訂したものです。
1. ヘルメット選びのポイント
フィッティング

ヘルメットは頭部の形状に合わせて、ユーロフィット(楕円)とアジアンフィット(丸形)に分けられます。
日本人は丸形が多いため、ワイドなアジアンフィットが合う傾向にありますが、もちろん個人差はあります。
基本的にメーカーの所在地域に合った形状に仕上げられていますが(OGKやKarmorならアジアンフィット、GIROならユーロフィットなど)、欧米メーカーでもアジアンフィットを展開していることもあるので、試着しながら最適なモデルを探していきます。
またフィッティング機構もメーカーごとに特徴があり、多くはフィットの強弱と傾きを調整できるようになっています。
機能性
ベンチレーション

ヘルメットに空いている穴の役割は2つ。
ひとつは頭部を蒸れないようにする通気孔の役割。通気孔が多いほど涼しくなりますが、冬は頭部が冷えるので注意が必要。逆に穴が少ないモデルは空力に優れますが、暑い日には熱がこもります。そのためシチュエーションによって最適なモデルを選択します。
もうひとつは肉抜きによる軽量化。長時間走る上で、ヘルメットの重量は首の負担に影響してきます。軽いほど快適なのはもちろん(ほんのわずかながら)パワーウェイトトレシオが上昇し、パフォーマンス向上に少しだけつながります。
ただほかのパーツと同じように、軽量モデルのほとんどはハイエンドモデルになるため。パフォーマンスをぎりぎりまで追求するか、コストと相談するかという選択が必要になります。
エアロダイナミクス

フレーム・ホイール・ウェアと、あらゆるプロダクトがエアロ化の流れにあります。
ヘルメットもその傾向は顕著で、各メーカーともエアロダイナミクスが強化されたモデルをラインナップ。頭部の空力変化は実感しづらいものの、少しでもパフォーマンスを最適化したいピュアレーサーは意識するポイントとなります。
安全性
JCF & CE EN1078

JCFおよび加盟団体が主催しているレースに出る場合は「JCF Approved」シールが貼られたものを選びます。
このシールはJCF(日本自転車競技連盟)が規定する安全性──衝撃吸収性、あごひもの強さ、汗・頭髪油の影響などをクリアしたことを示すもの。日本の代理店が扱っていない海外ブランドは、JCF認可がなく国内レースで使用できない場合があるので注意が必要です。
ただし安全性に関しては、より厳格なEU安全規格「CE EN1078」を満たしていればJCF以上に安心できるため、通常使用においてはJCFシールがなくても気にする必要はありません。EN1078はヘルメットの裏面に記載してあります。
関連リンク:JCF公認ヘルメット一覧
MIPS

近年のヘルメットに搭載されている安全機構“MIPS”(Multidirectional Impact Protection System = 多方向衝撃保護システム)。
落車するとき、頭部には回転性の衝撃が与えられることが多いため、その衝撃を緩和して脳障害のリスクを軽減するための仕組みです。MIPS搭載ヘルメットの内部に低摩耗シートが配置されており、回転衝撃が加わったときに、そのシートが頭の動きに合わせてすべることで、エネルギーを逃がすことができるもの。
少し値の張るモデルが多いですが、安全性を高めるためにMIPSモデルを選択しておくと安心です。
寿命
ヘルメットの寿命は、新品購入後からおおよそ3年と言われています。
たとえ転倒などしなくても、素材は経年・細かい衝撃・汗などによる劣化が進みます。外郭に変化が認められなくても、3年経ったら買い換えるというつもりで予算を検討します。
また1回でも大きな衝撃を与えると、強度が著しく低下してしまいます。一見問題なさそうでも、次に同じ箇所に衝撃が加わると直接頭部にダメージが加わってしまうので、そうなる前に買い替えます。
メーカーの選択

数多あるヘルメットメーカーの中でも、「KASK」と「GIRO」は世界的に高いシェアを持ち、業界のスタンダードを築いています。
KASKは強豪イネオス・グレナディアスに提供しているブランド力に加え、日本人の頭にフィットしやすい形状で国内でも非常に人気。
GIROもFDJやNTTプロサイクリングなど強豪チームに提供し、ヘルメットデザインの新境地も常に切り拓く存在。デザインだけでなく、MIPS搭載モデルを早くから積極的に投入するなど安全性にも強く配慮しています。
その2ブランドに加え、近年スタイル志向のサイクリストに広く受け入れられているのが、北欧ブランドである「POC」と「Sweet Protection」。
以下に紹介するモデルは、この4ブランドを中心に、デザイン・機能・安全性(CE EN1078)を両立しているものを価格帯別にセレクトしています。
2. エントリーグレード3選(¥10,000)
まずは初めてのヘルメットに最適なラインナップが揃う1万円前後から。
※MIPSマークがあるものは、MIPS標準搭載あるいはMIPS搭載モデルを選択可能
KASK
Rapido(ラピード)

重量 | 220g | 価格 | ¥8,500 |
すべてのビギナーにおすすめの「ラピード」。
初心者が一番気になるヘルメットの見た目も、KASKは帽体がすっきりしているためスマートに見えます。フィット感も抜群。
KASKヘルメットにMIPSは搭載されませんが、内部シェルと外部層を連結した“In-Moulding Technology”というオリジナルテクノロジーを用いて転倒時の衝撃を和らげてくれます。
Giro
Foray(フォーライ)

重量 | 250g | 価格 | ¥9,800 |
GIROのトップモデルSyntheのエッセンスを抽出したエントリーモデル「フォーライ」。
MIPS搭載&Syntheを踏襲する形状で定価¥9,800と、このスマートな見た目にそぐわずコストパフォーマンスに非常に優れます。少しワイドなつくりなのでアジア型向き。
Savant(サヴァント)

重量 | 226g | 価格 | ¥9,800 |
レーススタイルの「サヴァント」。軽量で耐久性があり、スリムなシルエットで被ったときもシャープな印象に。
ベーシックで流行に左右されないデザインが好きな方はこちら。国内展開モデルはワイドフィット。
Savantの価格を見る
Amazon
3. ミドルグレード5選(¥20,000)
軽量化、空力性能など「速さ」を求める機能が付与されるミドルグレード。見た目もスペックもこだわりたいサイクリストはここから。
KASK
Mojito 3(モヒート・キューブ)

重量 | 230g | 価格 | ¥19,800 |
2012年からの超ロングセラーモデル「モヒート」は、2019年に「モヒートX」、そして2020年に「モヒート3(キューブ)」へとアップデート。
KASKのアイコン的モデルは8年振りにデザインが刷新され、上位モデルのValegroやProtoneのように丸みを帯びたフォルムになりました。安全性もヨーロッパの安全基準を48%上回る性能。
トレンドのスタイルに進化したことで、ミドルグレードのヘルメット選びの際には、今後も選択肢から外せないモデルとなっています。
Valegro(ヴァレグロ)

重量 | 180g | 価格 | ¥22,000 |
KASKが2018年からラインナップに加えたのは、180gの超軽量ヘルメット「ヴァレグロ」。
その軽さや空気発散性能から、ヒルクライムや灼熱のライドに最適。
実際に被るととても頭が小さく見え、被り心地も気持ち良い。このクオリティを安定して担保させることに、さすがKASKと言いたくなる逸品です。
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GIRO
Cinder(シンダー)

重量 | 286g | 価格 | ¥16,800 |
上位モデルのSyntheを踏襲したハイレベルなミドルモデル「シンダー」。
Syntheよりも36g重いことや若干デザインが寂しい点はあるものの、充分なフィッティング性能を備えており、¥8,000という差額をどう捉えるかで選択します。ネオン柄や綺麗な色遣いのデザインも魅力。
POC
Omne Air Spin(オムネ・エア・スピン)

重量 | 305g | 価格 | ¥22,000 |
スウェーデンのブランド「POC」が展開するヘルメットは、ミニマムな北欧デザインが特徴。
頭部のボリュームを出す形状を「POCらしいスタイル」として定着させたデザイン力はさすがとしか言いようがありません。
2019年にリリースされた「オムネ・エア・スピン」は、人気の上位モデルOctalやVentralをベースに、よりシティスタイルに昇華させたミドルグレード。すっきりかわいい外観のPOCヘルメットがこの価格帯で手に入る、非常に魅力的なモデルが登場しました。
名称にある“SPIN”は、内部のパッドによって転倒時の衝撃を最小限に抑えるPOCオリジナルシステム。
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Wiggle
Smith
Network(ネットワーク)

重量 | 300g | 価格 | ¥25,000 |
50年以上の歴史を持つ米国のブランドSmithは、スノーヘルメットで培った技術をロードヘルメットにも展開。すべてのデザインがシックで大人びた印象を与えます。
2018年にリリースされた「ネットワーク」は、上位モデルと同じハニカム構造のインモールドを両サイドだけに用いて、必要な衝撃吸収性と大きな通気性を確保。
MIPS搭載の高プロテクション機能も加わったクリーンで洗練されたデザインは、大人っぽいサイクリストのスタイルにとてもマッチします。
Networkの価格を見る
Amazon
4. ハイエンドグレード6選(¥30,000)
デザイン・機能性・所有欲すべてを満たすスマートなヘルメット。サイクリストのこだわりは最終的にここに辿り着きます。
KASK
Protone(プロトーネ)

重量 | 215g | 価格 | ¥28,000 |
もはや説明は要らないほど普及しているグローバルスタンダードヘルメット「プロトーネ」。
アジア型の頭にも合いやすく、軽さ・エアフロー・デザイン観点すべて標準以上の満足感を得られます。KASKらしくカラー展開が豊富なのもうれしい。
GIRO
Synthe(シンセ)

重量 | 250g | 価格 | ¥29,800 |
RaphaやMAAPといったトップアパレルブランドとコラボしたデザインも展開してきた、孤高のスタイリッシュモデル「シンセ」。
少しサイドが膨らんで見えますが、逆にそれが格好良いと思わせるスタイルを確立したパイオニア的存在で、トップモデルのAetherが登場した今でもそのスタイルは色褪せません。
当然MIPS搭載モデルもあり、安全性とスマートさ、そして通気性を見事な調和で両立しています。2019年にはアジアンフィットも登場。
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Aether(イーサー)

重量 | 270g | 価格 | ¥44,800 |
Giroは長年シンセがトップモデルでしたが、2019年にさらなる最上位モデル「イーサー」がリリースされました。
特筆すべきはMIPSの新たなテクノロジー“MIPS Spherical”。前述のようなシート状ではなく、シェル自体が2層に分かれて動く構造(通常のMIPSより衝撃吸収性30%増)。
Giroらしい存在感のあるアウターシェルの形状は、今まで以上に道の上で“スタイリッシュなサイクリスト”を演出してくれ、価格もそれ相応のもの。
POC
Ventral Air Spin(ヴェントラル・エア・スピン)

重量 | 235g | 価格 | ¥33,000 |
ミドルグレードのOmne Air Spin同様、POCの2019年新作となる「ヴェントラル・エア・スピン」。
エアロエルメットの「ヴェントラル」に、前方から後方へ空気を送り出すような設計を追加した軽量モデルです。この外観で235gという軽さ、そしてマットカラーのスタイリッシュさが最高にクール。
もちろん転倒時の衝撃を緩和する“SPIN”システム搭載で安全性も兼ね備えています。
2020年にはアジアンフィットモデルも登場。
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Wiggle | TOKYO WHEELS
※アジアンフィットモデルのレビューはこちら
Sweet Protection
Facloner II(ファルコナー)

重量 | 280g | 価格 | ¥38,500 |
ノルウェーの「Sweet Protection」がロードヘルメットを初めてリリースしたのは2017年。そのプロダクトデザインはすぐに世界的に評価され、すでにスタイリッシュブランドの仲間入りをしています。
そのトップモデルの「ファルコナーⅡ」は、北欧デザインらしいミニマルな形状に、安全性とエアロとスマートな帽体をすべて凝縮。新しいヘルメットの価値観を生み出している無二の存在となっています(MIPSモデルとエアロモデルあり)。
Falconer IIの価格を見る
TOKYO WHEELS
※レビューはこちら
Smith
Trace(トレース)

重量 | 280g | 価格 | ¥35,000 |
かつてのSmithのフラッグシップ「オーバーテイク」を全方位から改良し、2019年にリリースされたのが「トレース」。
空力とベンチレーションが改善されたほか、強固な3重プロテクション構造が特徴的。①EPSフォームの外骨格、②衝撃吸収素材のインモールド構造(転倒衝撃緩和)、③MIPS搭載(回転衝撃緩和)という組み合わせが安全性を高めています。
より丸みを帯びたミニマルな形状により、コーディネートもしやすいデザインに。
Traceの価格を見る
Amazon
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身を守るファッションアイテム。

ヘルメットは命を預けるプロテクターであり、コーディネートするためのファッションアイテム。
そのため上記のような信頼のおけるメーカーのものを選択するほか、デザイン観点からも気に入るものをセレクトして、自分のスタイルをつくり上げていってください。