
頭部をスマートにプロテクト。
近年ヘルメットの進化は目覚ましく、安全性・快適性・エアロといった性能面に合わせ、デザインもよりスマートに。ヘルメットはただの機能性アイテムではなく、ファッションの一部として選ぶものとなりました。
そこで自分に合ったヘルメット選びのために、選び方のポイントと価格帯別に最適なモデルを紹介します。
text/Tats(@tats_lovecyclist)
1. ヘルメット選びのポイント
①フィッティング

ヘルメット形状の大分類は、ユーロフィット(楕円)とアジアンフィット(丸形)の2つ。
基本的にメーカーの所在地域に合った形状に仕上げられていますが(OGKやKplusならアジアンフィット、GIROやSweet Protectionならユーロフィットなど)、欧米メーカーでもアジアンフィットを展開していることもあります。
日本人だからといって全員がアジアンフィットに適合するわけではなく、また同じメーカーでもモデルによって微妙に形状が異なる場合があるため、試着しながら最適なメーカーやモデルを探していきます。
またフィッティング機構もメーカーごとに特徴があり、多くはフィットの強弱と傾きを調整できるようになっています。
②機能性

ヘルメットに空いている穴は通気孔と軽量化の役割があり、それぞれ「空力」「重量」という機材としての性能に関係します。
空力
通気孔が多いほど涼しく夏に最適ですが、冬はキャップなどを併用して冷え対策が必要です。
逆に穴が少ないモデルは空力に優れます。各メーカーともエアロダイナミクスに重点を置いたモデルも展開しており、少しでもパフォーマンスを最適化したいピュアレーサーは、エアロモデルが選択肢に挙がります。
重量
長時間走る上で、ヘルメットの重量は首の負担に影響します。軽いほど負担が少なく、またわずかながらパフォーマンス向上にもつながります。
ただしほかのパーツと同じように、軽量モデルのほとんどはハイエンドモデル。パフォーマンスをぎりぎりまで追求するか、コストと相談するかという選択が必要になります。
③カラー

これまでは赤や黄色など原色のラインナップが目立っていたヘルメットも、ここ2〜3年でアースカラーやニュアンスカラーの色展開が増加中。自転車ファッションがライフスタイル寄りになっている現在、ヘルメットも幅広いスタイリングを楽しめるようになっています。
もちろん安全性を重視したいという場合は、原色を選ぶこともひとつの解です。
2. ヘルメットの安全性
JCF / CE EN1078

JCFおよび加盟団体が主催しているレースに出る場合は「JCF Approved」シールが貼られたものを選びます。
このシールはJCF(日本自転車競技連盟)が規定する安全性(衝撃吸収性、あごひもの強さ、汗・頭髪油の影響など)をクリアしたことを示すもの。日本の代理店が扱っているメーカーのほとんどはJCFの認証を受けていますが、一部ブランドやモデルによっては、JCF認可がないものもあるので注意が必要です。
またJCFより厳格な安全規格として、EUが規定する「CE EN1078」があります。普段のライドで使う上での安全性の判断については、CEを満たしていればJCFシールがなくても気にする必要はありません。EN1078はヘルメットの裏面に記載してあります。
関連リンク:JCF公認ヘルメット一覧
MIPS

多くのヘルメットに搭載されている安全機構“MIPS”(Multidirectional Impact Protection System = 多方向衝撃保護システム)。
落車するときは頭部に回転性の衝撃が加わることが多いため、その衝撃を緩和して脳障害のリスクを軽減するための仕組みです。MIPS搭載ヘルメットの内部には低摩耗シートが配置されており、回転衝撃が加わったときに、そのシートが頭の動きに合わせてすべることで、エネルギーを逃がすことができます。
ヘルメットの寿命について

メーカー推奨のヘルメット交換タイミングは、新品購入後3年。
たとえ転倒などしなくても、経年や細かい衝撃・汗などによる劣化は進んでいるため、3年経ったら買い換えるというつもりで予算を検討します。
また1回でも大きな衝撃を与えると、強度が著しく低下してしまいます。一見問題なさそうでも、次に同じ箇所に衝撃が加わると直接頭部にダメージが加わる可能性があるので、事故などで強く頭部を打った場合は買い替えます。
3. メーカーの選択

数多あるヘルメットメーカー。その中でも「KASK」と「GIRO」は世界的に高いシェアを持ち、業界のスタンダードを築いています。
KASKは強豪イネオス・グレナディアスをサポートしているブランド力に加え、日本人の頭にフィットしやすい形状で国内でも非常に人気。
GIROも、FDJやキャニオン/スラムなど強豪チームをサポートし、ヘルメットデザインの新境地も常に切り拓く存在。デザインだけでなく、MIPS搭載モデルを早くから積極的に投入するなど安全性にも強く配慮しています。
その2ブランドに加え、スタイルも大事にするライダーに広く受け入れられているのが、北欧ブランドである「POC」「Sweet Protection」や台湾ブランドの「KPLUS」。
以下からは、この5つのブランドからトレンドのモデルを紹介。デザイン・機能・安全性(CE EN1078)を満たすモデルをピックアップしています。
4. トレンドのヘルメットブランド5選
KASK

モデル | 重量 | 価格相場 | リンク | |
① | Rapido | 220g | ¥8,000〜 | Amazon Wiggle |
すべてのビギナーにおすすめのエントリーモデル | ||||
② |
Mojito 3 | 230g |
¥13,000〜 | Amazon Wiggle |
トレンドを取り入れた進化版ミドルグレード | ||||
③ |
Valegro | 180g | ¥20,000〜 | Amazon Wiggle |
軽く涼しくスマートな軽量ヘルメット | ||||
④ |
Protone Icon | 230g | ¥25,000〜 | Amazon Wiggle |
グローバルスタンダードヘルメットの進化モデル | ||||
⑤ |
Wasabi | 270g | ¥30,000〜 | Amazon Wiggle |
開閉機構を備えたスタイル系エアロヘルメット |
帽体がすっきりしているためスマートに見えるKASK。KASKヘルメットにMIPSは搭載されませんが、内部シェルと外部層を連結した「In-Moulding Technology」というオリジナル技術で転倒時の衝撃を和らげてくれます。主なモデルは5つ。
●Rapido:すべてのビギナーにおすすめの「ラピード」。初心者が一番気になるヘルメットの見た目も、すっきりしたの帽体のKASKなら違和感なく使用できます。フィット感も抜群。
●Mojito 3:2012年からの超ロングセラーモデル「モヒート」が2020年に「モヒート3(キューブ)」へとアップデート。丸みを帯びたフォルムになり、安全性もヨーロッパの安全基準を48%上回るものに。トレンドのスタイルに進化したことで、ミドルグレードのヘルメット選びには外せないモデルとなっています。
●Valegro:2018年からラインナップに加わった、180gの超軽量ヘルメット「ヴァレグロ」。その軽さや風通しの良さから、ヒルクライムや灼熱のライドに最適。またとても頭が小さく見え、被り心地も気持ち良い。このクオリティを安定して担保させることに、さすがKASKと言いたくなる逸品です。
●Protone Icon:もはや説明は要らないほど普及しているグローバルスタンダードヘルメット「プロトーネ」が2022年に進化し「プロトーネ・アイコン」に。完成されていた前作のデザインを踏襲した上でよりスタイリッシュな形状となり、エアロダイナミクス、通気性、フィット感、安全性において前モデルを上回る仕上がりになりました。
●Wasabi:2021年にリリースされたKASK第2のエアロヘルメット「ワサビ」。シェルの開閉機構によって、エアロ効果だけでなくさまざまな気候に対応可能(特に秋冬に活躍)。ミニマルな丸みのある形状が美しく、オンロードだけでなくグラベル系のスタイリングにもマッチします。
KASKのヘルメット一覧を見る
Amazon | Wiggle
※KASKヘルメットのレビューはこちら
Giro

モデル | 重量 | 価格相場 | リンク | |
① | Agilis | 295g | ¥12,000〜 | Amazon Wiggle |
すっきりしたシルエットのMIPS搭載エントリーモデル | ||||
② |
Synthe | 250g | ¥25,000〜 | Amazon Wiggle |
いつまでも色褪せない孤高のスタイリッシュモデル | ||||
③ |
Eclipse | 275g | ¥32,000〜 | Amazon Wiggle |
冷却性能と空力性能を兼ね備えたエアロヘルメット | ||||
④ |
Aether | 270g | ¥25,000〜 | Amazon Wiggle |
進化版MIPSを搭載した存在感のある最上位モデル |
数々の強豪チームをサポートする信頼性、自社のテストラボを持つ安全性、先進的なデザイン性など、ヘルメットに必要な要件を兼ね備えたブランドGIRO。特に安全性に対する意識は高く、エントリーモデルからMIPSを採用し、あらゆるサイクリストに安心できるサイクリング環境を提供しています。ラインナップも豊富ですが、中でも以下4モデルはスタイリッシュ。
●Agilis:エントリーグレードでMIPSを搭載し、GIROの中でもすっきりしたシルエットの「アジリス」。初めてのヘルメットでも抵抗なく安心して導入できます。ユニバーサルフィットも採用されており、アジア型でも被りやすいのが特徴。
●Synthe:孤高のスタイリッシュモデル「シンセ」。少しサイドが膨らんで見えますが、逆にそれが格好良いと思わせるスタイルを確立したパイオニア的存在で、トップモデルのAetherが登場した今でもそのスタイルは色褪せません。2019年にはアジアンフィットも登場。
●Eclipse:エアロヘルメット「ヴァンキッシュ」の後継モデルとして2022年にリリースされた「エクリプス」。エアロカテゴリに関わらず14個のベンチレーションホールで高い冷却性能を備え、それでいて空力性能は前モデルを上回るハイテクノロジー。レーシーすぎないエクリプスのデザインはどんなスタイルにもフィットします。
●Aether:最上位モデル「イーサー」の特筆すべき特徴は、MIPSの新たなテクノロジー「MIPS Spherical」。前述のようなシート状ではなく、シェル自体が2層に分かれて動く構造(通常のMIPSより衝撃吸収性30%増)。Giroらしい存在感のあるアウターシェルの形状は、今まで以上に道の上で“スタイリッシュなサイクリスト”を演出してくれます。
Giroのヘルメット一覧を見る
TOKYO WHEELS | Wiggle
※Syntheのレビューはこちら
POC

モデル | 重量 | 価格相場 | リンク | |
① | Omne Air Spin | 305g | ¥18,000〜 | Wiggle |
すっきり可愛いシティスタイルのミドルグレード | ||||
② |
Ventral Air Spin | 235g | ¥30,000〜 | Wiggle | TOKYO WHEELS |
空気が流れるスタイリッシュな軽量ハイエンド | ||||
③ |
Ventral Spin | 248g | ¥35,000〜 | Wiggle |
空力性能&換気性能に特化したエアロ系ハイエンド | ||||
④ | Ventral Lite | 210g | ¥30,000〜 | Wiggle |
軽さ&換気性能に特化した夏用モデル |
スウェーデンのブランド「POC」が展開するヘルメットは、ミニマムな北欧デザインが特徴。頭部のボリュームを出す形状を「POCらしいスタイル」として定着させたデザイン力はさすがとしか言いようがありません。
ヘルメット名称に含まれる“SPIN”は、内部のパッドによって転倒時の衝撃を最小限に抑えるPOCオリジナル機構のこと。
●Omne Air Spin:人気の上位モデルをベースに、シティスタイルに昇華させたミドルグレード「オムネ・エア・スピン」。すっきりかわいい外観のPOCヘルメットがこの価格帯で手に入る、非常に魅力的なモデルです。
●Ventral Air Spin:エアロエルメットの「ヴェントラル」に、前方から後方へ空気を送り出すような設計を追加した軽量モデル「ヴェントラル・エア・スピン」。この外観で235gという軽さ、そしてマットカラーのスタイリッシュさが最高にクール。2020年にはアジアンフィットモデルも登場。
●Ventral Spin:空力に特化した「ヴェントラル・スピン」。ヘルメットの外側だけではなく、内部を通気するように設計されているため、空力性能と換気性能を両立した機能的ハイエンドモデル。パフォーマンスを重視するサイクリストに最適。
●Ventral Lite:2021年に登場した「ヴェントラル・ライト」は軽量性と通気性に特化。Ventral Air Spinをベースにし、よりミニマリスト的な観点で開発。SPIN機能は排除されていますが安全基準はクリアしています。夏に最適。
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TOKYO WHEELS | Wiggle
※Ventral Air Spinアジアンフィットモデルのレビューはこちら
Sweet Protection

モデル | 重量 | 定価 | リンク | |
① |
Falconer Ⅱ | 280g | ¥35,200 | TOKYO WHEELS |
ミニマルな形状に安全性・エアロ・スマートさを凝縮したハイエンド | ||||
② |
Falconer Ⅱ Aero | 260g | ¥44,000 | TOKYO WHEELS |
脱着式エアロカバー付きの2way軽量モデル |
ノルウェーの「Sweet Protection」がロードヘルメットを初めてリリースしたのは2017年。そのプロダクトデザインはすぐに世界的に評価され、すでにメジャーブランドの仲間入りをしています。展開するモデル数は絞っており、またユーロフィットのためフィットするサイクリストは限られるかもしれませんが、そのデザインは無二のもの。
●FalconerⅡ:北欧デザインらしいミニマルな形状に、安全性とエアロとスマートな帽体をすべて凝縮した「ファルコナーⅡ」。新しいヘルメットの価値観を生み出している無二の存在となっています(MIPSモデルあり)。
●FalconerⅡ Aero:Falconer Ⅱと基本的な形状は同じですが、より軽く仕上げられた「ファルコナーII エアロ」。脱着できるエアロカバーが付属するため、これ1つでエアロヘルメットと軽量ヘルメットの2つの用途が兼ねられます。ライドの内容や気温によって付け替えできるな便利なモデル。
Sweet Protectionのヘルメット一覧を見る
TOKYO WHEELS
※Falconer IIのレビューはこちら
KPLUS

モデル | 重量 | 定価 | リンク | |
① | NOVA | 288g | ¥24,200 | Amazon |
美しい造形を持つ唯一のアジアンヘルメット | ||||
② |
ALPHA | 295g | ¥29,700 | Amazon |
エアロ形状でMips搭載の パフォーマンス重視モデル | ||||
③ |
META | 289g | ¥24,200 | 公式サイト |
オフロードヘルメットの要素を取り入れたグラベル対応モデル |
2014年に創業した台湾ブランドで、2019年から国内展開も始まっているKPLUS。そのブランドコンセプトは「ファッション」「クオリティ」「アジアンフィット」の3つ。ヘルメットを“サイクリストのファッションに欠かせない重要なアクセサリー”と位置付け、コーディネートしやすく、安全性の高いアジアンフィットのプロダクトをつくっています。代表的なモデルは3つ。
●NOVA:KPLUSを代表するオールラウンドモデル「ノヴァ」。丸みを帯びたシルエット、正円に近いアジアンフィット、後頭部に埋め込まれた反射素材など、日本人の頭部をスマートにする要素に溢れています。豊富なカラー展開も唯一のもの。
●ALPHA:NOVAよりもパフォーマンス寄りにつくられた新世代のオールラウンドモデル「アルファ」。このモデルからフィットシステムが進化し、さらにMipsも搭載されたことで、フィット感も安全性も強化。エアロな外観と合わせてより走りたい気持ちに沿うヘルメットに仕上がっています。
●META:初のグラベル対応モデル「メタ」(2022年6月発売予定)。オフロードヘルメットの形状を取り入れたフォルム、マグネットで脱着できるバイザーを備え、どのような地形でも駆け抜けることができるヘルメット。ALPHAと同様の新フィットシステムを搭載。
KPLUSのヘルメット一覧を見る
Amazon
※Kplusヘルメットのレビューはこちら
身を守るファッションアイテム。

ヘルメットは命を預けるプロテクターであり、コーディネートするためのファッションアイテム。
そのため上記のような信頼のおけるメーカーのものを選択するほか、デザイン観点からも気に入るものをセレクトして、自分のスタイルをつくり上げていってください。
著者情報
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Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはFactor O2(ロード)とLS(グラベル)。 |