
ただ勝利のための、美しいバイクたち。
7月に開催されたツール・ド・フランス2018において、勝利を手にしたバイクのメーカーとモデルを一覧にしました。
今年で3回目のまとめとなり、各ステージでの勝利を加えて紹介。
昨年と引き続き勝利数ではSpecialized圧倒的という結果ですが、ほかにも新たに投入され、結果を出した各メーカーのリストから「強いバイク」を探す参考にしてください。
1. 出場バイク一覧と今年のトレンド
まずは今回出場したメーカー・バイクをチーム総合順位で一覧化。そこから今年のトレンドを紐解きます。
チーム総合順位
| 順位 | 前回 | チーム | メーカー | 主なバイク |
| 1 | 6 | モヴィスター チーム | Canyon |
Aeroad CF SLX
|
| 2 | 20 | バーレーン・メリダ | MERIDA |
Reacto Team-E
|
| 3 | 1 | チーム スカイ | Pinarello | Dogma F10 |
| 4 | 17 | チーム ロットNL・ユンボ | Bianchi | Oltre XR4 |
| 5 | 10 | アスタナ プロチーム | ARGON18 | Gallium Pro |
| 6 | 12 | チームサンウェブ | Giant |
TCR Advanced SL
|
| 7 | 4 | AG2R・ラ・モンディアル | FACTOR | O2 |
| 8 | 4 | BMCレーシングチーム | BMC |
Teammachine SLR01
|
| 9 | 15 | クイックステップフロアーズ | Specialized |
S-Works Tarmac
|
| 10 | 5 | ミッチェルトン・スコット | Scott | Foil RC |
| 11 | 11 | UAEチームエミレーツ | Colnago | C64 |
| 12 | 16 | コフィディス、ソリュシオンクレディ | KUOTA | Khan |
| 13 | 3 | トレック・セガフレード | TREK | Madone 9.9 |
| 14 | 8 | チーム フォルテュネオ・サムシック | LOOK | 795 Light RS |
| 15 | 22 | グルパマ・エフデジ | Lapierre |
Aircode SL Ultimate
|
| 16 | 13 | ディレクトエネルジー | Wilier | Cento10 Pro |
| 17 | 19 | チーム カチューシャ・アルペシン | Canyon |
Aeroad CF SLX
|
| 18 | 18 | ボーラ・ハンスグローエ | Specialized |
S-Works Tarmac
|
| 19 | 14 | ワンティ・グループゴペール | Cube |
Litening C:68 SL
|
| 20 | 7 | チームEFエデュケーションファースト・ドラパック | Cannondale |
Supersix Evo Hi-Mod
|
| 21 | 21 | ディメンションデータ | Cervelo | R5 |
| 22 | 9 | ロット・ソウダル | Ridley | Helium SLX |
今年の機材トレンド
バイク全体の機材内容を見ると、エアロ化はもちろん、今年のツールから本格解禁となったディスクブレーキモデルの投入が見られています。
初回のディスク使用率は今後のマイルストーンとなるため注目ポイントでしたが、今回はボーラハンスグローエのSpecializedやトレック・セガフレードのTrek、ディレクトエネルジーのWilierなど、全体の1/4程度のメーカーが一部の選手あるいは全員にディスク車を採用してきたという結果。
これはスポンサーの資金&サポート面での体力(リムとディスクを両方用意するコスト)や、性能・選手の慣れ・トラブル時の対応力などでまだまだリムブレーキに分があるという判断からのようです。
エアロ×ディスクのメリットとしては、エアロで高速化しつつディスクで制動性を高めることで、より高速域でぎりぎりのスピードコントロールができるようになること。ディスクの重量増で若干上りのハンデを抱えるものの、ダウンヒルでリカバーできるため、路面状況が刻と変化するロードレースで選択する価値は現時点でもあります。
ただ、上記の理由から、リムとディスクが混在する状況は今年だけでなくしばらく続きそう。
2. 4賞ジャージたちのバイク
個人総合
Pinarello – Dogma F10 Xlight(ゲラント・トーマス/チーム スカイ)

昨年から投入されたF10の性能は色褪せることなく、引き続きマイヨ・ジョーヌを獲得しました。
F10ファミリーのうち、山岳ステージではノーマルF10より60g軽量な“Xlight”が活躍。(フレームセット ¥680,000-)
ただスカイ強すぎ、画面に映りすぎ、見慣れすぎ、という状況、、、
ポイント賞
Specialized – S-Works Venge(ペテル・サガン/ボーラ・ハンスグローエ)

ツールで投入された新型、3代目Venge。
各社のエアロロードの中で頭ひとつ飛び抜けていて、平地では敵なしの状態。(完成車 ¥1,200,000)
インプレ記事はこちら↓
山岳賞
Specialized – S-Works Tarmac(ジュリアン・アラフィリップ/クイックステップ フロアーズ)

遠目からはVengeと見分けがつきにくいほどエアロ化したTarmac。速くて扱いやすいオールラウンドモデルです。(完成車 ¥1,134,000)
新人賞
FACTOR – O2(ピエール・ラトゥール/AG2Rラモンディアル)

2007年創設の英国メーカーFACTOR。ロメン・バルデの活躍だけでなく、新人賞獲得により、新興メーカーの実力と存在感を示しましたた。
O2は740gの軽量フレームとフラットデザイン、そして全メーカー中最も洗練されたFACTORロゴ要素含め、すべてのバランスが絶妙(フレームセット: ¥545,000)。
3. ステージ勝利バイク
全21ステージ中、勝利数の多いチームから順に並べています。
| 4勝 | |
| クイックステップフロアーズ | Specialized |
| 3勝 | |
| ボーラ・ハンスグローエ | Specialized |
| チーム ロットNL・ユンボ | Bianchi |
| 2勝 | |
| UAEチームエミレーツ | Colnago |
| チームスカイ | Pinarello |
| アスタナ | Argon18 |
| 1勝 | |
| BMCレーシング | BMC |
| トレック・セガフレード | TREK |
| モヴィスタ― | Canyon |
| グルパマ・エフデジ | Lapierre |
| チーム・サンウェブ | Giant |
Specializedが2チーム合わせて圧倒的7勝。
それに次いで、Bianchi、Colnago、Pinarelloといったイタリアンブランドが結果を出しています。
ピックアップバイク
Bianchi – Oltre XR4(3勝)

ビアンキはマーケティングが上手なブランド。
カフェや海の家を作ったりユニクロTシャツを出したりしながら、非ロードバイククラスタにも「おしゃれなロードバイクのブランド」という認知をさせ、いずれクロスバイクやエントリーロードを買うタイミングでビアンキを選択してもらう。
ただ、それだけだとこだわりの強いシリアス層からは「軟派なブランド」という反発を受けるので、強豪チームに機材を供給し、ツールという大舞台で勝利できるバイクであるという実績をつくる。
こうすることで、あらゆるクラスタがビアンキを受け入れられるようになっています。
こうして3勝も挙げたビアンキのメインバイクである“Oltre XR4”は、振動除去素材カウンターヴェイルを取り入れたエアロロードで、山岳ステージでも好まれて使われるバランスの良いバイク。(完成車 ¥970,000〜)
Colnago – C64(2勝)

春に発表されたコルナゴのフラッグシップ“C64”。相変わらず繊細さを感じさせるペイントが美しい。(フレームセット ¥650,000〜)
コルナゴは来年からロゴデザインの変更が行われ、オールドファンにとっては賛否があると思います。ただ、旧来のセリフ体フォントはトレンドから外れており*、今回のリニューアルは新しい顧客層を獲得するために必要なものであると「理解」しています。
*ロゴトレンドについての考察はこちら:ロードバイクデザインの変化とその先にあるもの
Canyon – Aeroad CF SLX(1勝)

キンタナを擁してキャニオンに乗るモビスターは、途中からチーム総合を獲得するための走りに切り替え、見事に1位となりました。
僕ら一般ユーザーにはディスクブレーキを推すキャニオンですが、レースではチーム全員の話し合いによりリムブレーキモデルを採用。
Aeroadは快適性と空力を併せ持ったエアロフレームで、本レースでもほとんどのステージで選択されました。(完成車 ¥899,000)
Trek – Madone 9.9(1勝)

よくVengeと比較対象にされる同じアメリカンエアロロードのマドン。男性的な肉厚さがTREK好きにとってたまらないフォルム。(完成車 ¥1,099,000〜)
ツールではディスクブレーキモデルが全員に投入され、いち早く新スタンダードへのシフトを決めたことに、さすが大手メーカーの資本力を感じました。
* * *
こうやって振り返っていると、ロードバイク業界の機材革新はある程度ネタが出尽くした感はあります。
来年はディスク採用率の増加や新たに12速コンポなどを搭載したバイクなど、少しずつ変化は見えると思いますが、機材革新以上に勝利によってブランド力をレースでどれだけ見せつけていくか、という点がシリアスライダー界隈に訴求するためにはとても重要。
この点SpecializedやPinarelloが一歩抜きん出ているのが現状ですが、ほかのメーカーの活躍も期待しています。それが業界の活性化にもつながっていくことに。
















