text by Tats(@tats_lovecyclist)[PR]
昨年dhbの開発者に行ったインタビューでは、dhbがコスパ重視からプロ仕様へのブランドへと転換を図っていることがわかりました。
これは自転車ブーム以降サイクリストの経験値が高まったことで、高機能なラインが求められるようになったことが背景にあります。
そこでdhbは2018年から“Aeron LAB”と呼ばれるプロチーム向けのトップモデルを開発し、それを頂点として各モデルのクオリティを改善し続けてきました。毎年dhbのウェアに触れてきた僕個人の感覚からしても、dhbはよりレーシーになり、またほかの海外ブランドとの品質の差はほとんど埋まりつつあります。
そうした改善を続けて迎えたAW2020のリリース。Googleハングアウト越しにウェア開発者のJohnと再会し、各モデルの開発の意図を聞きました。
1. 英国とdhbの現状
── 最近の英国の状況はどうですか?日本はマスクやアルコール消毒の習慣はあるものの、日常が戻ってきている様子です。
John:それは羨ましいです。英国はまた感染者数が増えていて、普段の生活を送るにも結構制限があります。追跡アプリでチェックインしないとレストランに入れなかったり、またロックダウンするという話も出ていますし、面倒なことが多いですね。
※本インタビューは2020年10月中旬に行っている
── オフィスには人がほとんどいないように見えます。
John:久しぶりに出社していますが、ほとんど社員はいません。基本は在宅勤務なので。
── そのあたりはこちらとも同じですね。こうした状況はサイクリング関連アイテムの売上にどう影響していますか?
John:世界的に自転車通勤やサイクリングのニーズが高まっていることもあり、逆に売上が伸びていますね。特に機材系は仕入れてすぐに在庫がなくなるという状況です。弊社のブランドだとVITUS(ヴィータス)がとても人気で、売り切れが続いています。
── VITUS格好良いですよね。日本でも乗り手が増えているように見受けられます。ウェア関連はどうでしょう。
John:在庫自体はある程度確保できており、売れ行きも非常に順調です。
前回掲載いただいた記事のおかげもあって、日本でもレース寄りの「Aeron(エアロン)」ジャージの売上が伸びているんです。これまではリーズナブルなBlokやClassicが主流だったのですが、こうして売れ筋が変わってきているということは、ブランド価値の転換をユーザーの方に受け入れられているということだと思っています。とても喜ばしいです。
── 僕自身、前回直接話を伺ったこともあり、dhbのイメージはここ1年で大きく変わりました。Aeronだけでなくメリノ系の充実や女性用「MODA」の登場など、コスパ系のブランドから、よりサイクリストのニーズに寄り添ったウェアブランドになっていると感じます。
女性専用ラインの「MODA」
2. AW2020のこだわり
── そしてAW2020シーズンの新作が出ましたね。ラインナップがかなり増えているので、整理を含めて改めてカテゴリごとの違いを教えてもらえますか?
John:もともとdhbにはAeron、Blok、Classicという3つのカテゴリがありました。レース系の「Aeron」、デザイン重視の「Blok」、ベーシックな「Classic」という位置付けですね。これらのラインナップに加えて、着心地を追求した「メリノ」、 女性専用の「MODA」が加わっています。
── メリノは新しいですね。これ試させてもらったのですが、めちゃめちゃ良いです。タイトにつくられているのに滑らかで着心地良いし、シルエットが格好良い。僕の中ではdhbウェアの印象が最も変わった一着です。
John:メリノにはすごくこだわっているので、そういったフィードバックは大変嬉しいです。
着心地良く、シルエットの美しいメリノ
── そしてAW2020の中で一番のウリは「Aeron」のジャケットだと聞きました。
John:はい。プロ仕様のAeronは、メリノと同様生地にこだわっています。今シーズンは3つのジャケットをラインナップしています。
1. Aeron All Winter(推奨気温2〜12℃)
All Winterという名前の通り、3つのジャケットの中で最も汎用性が高く、日本の冬に最も適したジャケットです。
前面に防風&耐水のメンブレン、背面に通気性が高い素材を用いているので、暖かくなっても熱がこもることもなく快適にライドできます。
Aeron All Winterジャケット – メンズ | ウィメンズ(¥17,000)
2. Aeron Lab All Winter(推奨気温0〜12℃)
純粋なプロ仕様を指す“Lab”の名がついたこのジャケットは、All Winterよりもタイトなレースフィットで、プロチーム(canyon dhb)が使用しているものと同じモデルです。
このジャケットに使われているPolartec素材は、防風・防水性能があり非常に軽量です。また裏面のもこもこした素材はフリースよりも薄くて軽く、保温性に優れています。
All Winterよりも、強度高くレーシーな走りを求めるサイクリストに最適です。
Aeron Lab All Winterジャケット – メンズ | ウィメンズ(¥26,000)
3. Aeron Deep Winter(推奨気温-2〜12℃)
Deep Winterはdhbの中で最も温かいジャケットですが、厚みと重量が結構あるので、もしかしたら日本の冬には暑すぎるかもしれません。 通常使用であればAll Winterで充分ですが、すごく寒がりの方や極寒の地にお住まいの方のためにDeep Winterという選択肢を用意してあります(メンズのみ)。
Aeron Deep Winterジャケット – メンズ(¥18,500)
── 日本の冬に最も最適な「All Winter」、All Winterをプロ仕様にした「Lab All Winter」、寒がりなサイクリストに最適な「Deep Winter」という感じですね。
John:そうですね。
── Lab All Winterに関しては、実際に着用するとかなりタイトです。前傾姿勢でぴったり収まるようなカッティングなので、休憩中上体を起こすと少し突っ張るほどでした。まさに“プロ仕様”のつくりです。
John:細身の体型の方は、サイズガイド通りに選択すればウェアのパフォーマンスを最大限実感いただけると思います。もし大柄な方や、締め付けが苦手な方がLab All Winterを選ばれるときは、1サイズアップをお勧めします。
── デザイン面ではどんな点に気をつけていますか?
John:やはり機能性だけでなく、安全性にも配慮は必要ですので、視認性を上げることを常に意識しています。反射素材だけでなく、背面に切り替えデザインを用いているのもそういう理由が多いですね。
── 安全性は何よりも大事ですね。dhbのウェアは比較的ビビッドな原色が使われることが多いのですが、そこには安全性以外にも理由があるのでしょうか?
John:英国で人気の色はポップカラーなんです。ほかのブランドでは落ち着いたトーンが多い傾向にありますが、dhbではポップな色味が人気ですね。
ただアースカラーのようなトレンド色もラインナップに含めているので、ユーザーにはお好みのカラーを選んでいただけます。
サイクルウェアは機能性ウェアというだけではなく、ファッションウェアでもあるので、ある程度トレンド性や心をときめかせてくれる、という観点も必要だと思っています。
3. dhbウェアのレイヤリング
── 着こなし方についても伺いたいのですが、All WinterやLab All Winterのようなジャケットは、どうやってレイヤリングすることを想定されていますか?
John:基本的にプロチーム(Canyon dhb)で着用するときは、ベースレイヤー+ジャケットの2枚でレイヤリングしています。やはり強度高く走るときは熱がこもらないようにする必要がありますね。
あまり重ね着しないことで、Polartecなどの素材の良さを最大限に引き出すことができると思います。
── 個人的な感覚なのですが、ノンストップで高強度で走るときは2枚でも何とかなりますが、信号・コンビニ・カフェなど停車を挟むライドだと止まっているときにすごく寒いんですよね。
John:そういう場合はミドルレイヤーを挟んでもらっても全然問題ありません。寒さの感じ方は個人差が大きいので、暑くなりすぎない範囲で1枚追加してもらえればと。
── 英国と日本はそれほど気候が変わりませんが、欧州の方は日本人より寒さ耐性が強いので、薄着されている方が多いですよね。僕は結構寒がりなので、冬にAeronジャケットを着て走るときは、ミドルレイヤーに薄手の裏起毛ジャージを挟むと思います。
4. dhbの新たな展開
── プロ仕様への変化に伴い、ラインナップが多様化し、それがユーザーにも受け入れられつつあるという現状がわかりました。
一方でマーケットのニーズも多様化していて、ひとつの方向としてアドベンチャー寄りのグラベル系ウェアを扱うブランドも増えてきています。こうした方向性に対して、dhbブランドはほかのオプションを検討しているでしょうか。
John:前回もお話したことですが、dhbは英国内での売上がもっとも大きく、シーズンによって日本が2番目のシェアを占めるという状態です。ですので英国のユーザーからのフィードバックの声を受けることが最も多いのですが、英国で緩いフィットのウェアを探しているロードサイクリストは少ないんですよね。
以前Wiggle内でTed Bakerのカジュアル自転車ウェアを展開したことがありましたが、レーシーなウェアと比べると英国内でそれほど売れ行きは良くなかったんです。日本の売上の方が多かったくらいです。
── 緩めのラインが売れるのは日本だと。
John:はい、英国も日本も気候や環境は似ているものの、売れるものには国別に独自性がありますね。
それを顕著に表すほかの例として、ジャンルは違いますが、ホイールで赤いスポークの限定バージョンを出すと必ず日本のユーザーに買っていただけるんです。英国ではそういうものがあまり売れないのに、なんでだろうと同僚といつも話しています(笑)。
── その話面白いですね…!赤が好きなサイクリストが多かったり、デコレーションを好む独特の文化なので、そういった背景から来るものなんだと思います。
John:なるほど。バイクに求めるものが違うんですね。
グラベル系の話に戻すと、MTB用ウェアが国内で別にニーズがありますので、そちらは今後強化することを考えています。グラベル系だとそちらを利用いただけるかなと思います。
── そうなんですね、それは楽しみです。
John:dhbは顧客中心を掲げているブランドですので、日本のお客様からも声をいただいて商品の開発や改善に活かしていきたいと思っています。ぜひ積極的にdhbにフィードバックをお寄せください。
前回のインタビューで明らかにしたのは、「ブランド戦略の転換」について。そして今回は、戦略を変えたことによる「ラインナップの変化」について整理する機会となりました。
dhbはブランド自体が拡大しているので、どれを選択するべきか悩む状態にもなっています。ただ、その豊富なラインナップから懐が深いブランドでもあるので、さまざまなライドスタイルにフィットするウェアが揃っているのも確か。
本稿がブランド背景を知り、読者のウェア選択の一助になればと思います。
Text by Tats(@tats_lovecyclist)
[PR]提供:Wiggle CRC