2024年秋:最近気になるロードバイク関連のモノ・話題

2024年秋:ロードバイク関連のトピック

こんにちは。最近のトピックや業界の話題に触れたりする、半年に一度くらいの定例企画です。今回は5つのトピックをお届け。

text & photo / Tats@tats_lovecyclist

ハイエンドは売れる

ハイエンドモデルS-Works

さまざまなメーカーや販売店の人からここ最近よく聞く話で、「ハイエンドモデルは勝手に売れるが、ミドルグレード以下は売りづらい」という状況が続いている。平たく言えば、S-Worksは売れる。Hi-ModとLAB71は売れる。
だから代理店もハイエンド寄りの在庫を充実させている。
こうした状況下でも、裾野を増やすためにもっと安価なモデルを充実させるべき、という主張があるが、これは正しいだろうか?

今のハイエンド志向は、趣味の特性に根ざした現象だと言える。
ほとんどのサイクリストにとって、ロードバイクの最新技術と洗練されたデザインは、ただの「速い乗り物」ではなく、SNSを含めた自己表現や走りの充実度を高めるための「体験」として捉えられている。つまり、「最高の体験を追求するためのギア」として高価なハイエンドモデルが求められている。

「価格を抑えたモデルを増やすべき」という意見が出るのも理解できるが、それが売れない理由は代理店のせいでもメディアのせいでもなく、マーケットの大部分がそれを求めていないからだ。さらに、手頃な価格帯で提供する中華系ブランドとの競合が、トップメーカーのミドルグレード市場が収縮している要因ともなっている。

SNS時代は自己表現と体験価値の追求がより顕著であり、その結果としてハイエンドモデルが売れることは自然の流れだ。だから価格を抑えた商品は、ロードバイクに特別な価値を見出すユーザーにとって、往々にして十分な魅力を感じられない。趣味における「いいものを突き詰めたい」という心理は、むしろハイエンド志向の本質にふさわしい。

 

中国マーケットと中華ブランド

欧米ブランドのハイエンドが売れる傍らで、“コスパが良い”と言われる中華系ブランドがどんどん日本に入ってきている。
大量の新興ブランドが立ち上がる中国だが、そもそも中国国内の自転車事情はどうなっているのだろうか。InstagramもGoogleも中国では使えないため、どんなサイクリストがいるかがこれかのプラットフォームからは窺い知れない。

日本でサイクリング事業を手掛ける中国企業の人に最近の自転車事情を聞く機会があったので、簡単に表にした。

▼日本と中国のサイクリングマーケットの違い▼

  日本 中国
ボリュームゾーン 40-50代 20-30代
情報収集 SNS(Instagram / X)
YouTube、Web、雑誌
SNS(Red)
トップインフルエンサーのフォロワー数 3〜4万人 300万人

インバウンドで訪れるサイクリストを見ると、40-50代の富裕層が乗っているイメージだったが、想像とは違い、実際は表のように若年層の人気スポーツになっている。

Redのイメージ

『Red』には若いサイクリングコミュニティばかり

中国版Instagramと言うべきSNS『Red(小紅書)』を見るとその状況がよくわかる。コミュニティの規模は大きく、男女ともに若い。自転車の最新情報はSNSに偏重しているが、その分トップインフルエンサーのリーチ数が圧倒的に多く(日本の100倍!)、インフルエンサーマーケティングに多大な予算が割かれている。
しかもインフルエンサーたちはみな走り込んでいてフォームも格好良い。若くてスタイリッシュな女性が自転車の発信をすることで、同じく若い男性も自転車を始めるきっかけになり、全体的に華やかで活気あるイメージが形成されている。
世界的な価格高騰の中で、中国のこのイケイケな状況を見ると、マーケットの裾野を広げるために必要なのは、安価なモデルを充実させることではないということがよくわかる。

こういう勢いのあるマーケットだからこそ、次々と新しい中華ブランドが出てくる。
まだ歴史が浅くブランド力もないし、品質も不安定なものが散見されるので、前述のハイエンド志向には相反するが、日本でも“コスパ”好きなユーザーから受け入れられはじめている。中国市場が若いだけあって、中華ブランドの攻勢はこの先も続くだろう。

 

Raphaに対する愛のある批評

©Escape

創業20周年を迎えたRapha。これを受けてEscspeに掲載された記事「20 Years of Rapha」が面白い。著者のWallace氏は、かつてRaphaの黎明期に在籍し、オーストラリアとニュージーランドの事業立ち上げに携わってきた(現在はEscapeの共同創業者)。
この記事では、ニッチなサイクリングブランドから、サイクリング文化に大きな影響を与える存在への20年の変遷が描かれていて、黎明期の空気感や、Raphaを退いたあとに外から見るブランドへの想いなどがリアルに伝わってくる。

いくつか刺さるセンテンスがあった(抄訳)

  • ・「何かを成長させたいなら、コントロールを手放す必要がある」(Simon Mottramの言葉)
  • ・Raphaは、Lululemonのようになろうとし、Rapha がインスピレーションを与えたほかのブランドに移行してしまったコア顧客に執着している、ぎこちない過渡期にいるように見える
  • ・スカートやヒジャブなど、これまであまり注目されてこなかったサイクリスト向け製品を通じて、サイクリングをより身近にしようとする取り組みを私は称賛する

最近の幅広いターゲットへ向けたライフスタイル重視へのシフトに対して否定的な表現もあるが、僕個人の好みで言えば、Simonの手を離れてからのRaphaの方が好きだ。アイコニックな腕のバンドや、ロゴが目立たなくなり、色使いもラインナップもより時代に合わせて自由になったと感じる。
Wallace氏は、今のRaphaが彼を“主要顧客として見捨てた”と書いているが、代わりに僕のように新たな顧客になったサイクリストもいる。彼の言うように過渡期であることは間違いない。

Escapeは会員制メディアだが、月間3記事までは無料なので気になる方は誰でもこちらから読める。

 

白いグラベルシューズがどんどん出てきた

白グラベルシューズイメージ

1月の記事で、『シュッとした白SPDシューズがほしい』というトピックを書いたが、それから約半年でどんどん白いやつが出てきた。「舗装路でもSPDを履きたい」というニーズはグローバル規模で結構あるもよう。

▼白グラベルシューズ有力候補


Quoc Gran Tourer XC(¥35,200)

Udog Distanza(¥36,400)

Fizik Vento Proxy(¥39,900)

Fizik Tempo Beat(¥29,500)

Crankbrothers Candy Gravel/XC(¥26,400)

Specialized Recon(¥49,500)

個人的にはFizik Tempo Beatが一番刺さった。ロードバイクでもSPD系ペダルを付けるのは当たり前になっていくだろうし、グラベルシーンもさらにスタイリッシュになっていくだろう。

 

チューブレスタイヤつらい

チューブレスタイヤのパンク対応

パンクしたらヌルヌルシーラントまみれが宿命

チューブレスタイヤを使うようになって4年以上経つが、今年に入ってトラブルが続発した。原因はチューブレスバルブの破損、チューブレステープの破れといったもの(そのときは幸いTPUチューブを持っていたか、近くにショップがあった)。

チューブレスはトラブルが起こりづらいのは良いが、いざトラブルが発生すると詰んでしまうことがあるのがつらい
トラブルの要因は、シーラント不足、バルブ破損、リムテープ破れなど、いくつか考えられるため、完全に解消するためにはひとつひとつ見ていくしかない。絶対に出先ではできない。
そうなるとチューブを入れるしかなく、シーラントでベトベトになりながら作業するのは心底メンタルにくる。ビードが上がらなかったら体力も激しく消耗する。泣きたい。
だからクリンチャータイヤに戻った周りのサイクリストは本当に多い。

それでも乗り心地はチューブレスの方が遥かに良いので、普段のライド体験を考えると、クリンチャーには戻りたくないのが本音だ。
トラブルを未然に防ぐためにも、シーラントの定期補充と、年1回のリムテープとバルブ交換を忘れないようにする。
各メンテナンスのタイミングは、リマインダーに予め予定を登録しておくと良い、というのを仲間から聞いてそのようにしている。ホイールが複数あると、どれをいつ対応したか曖昧になってしまうので、ライフハックとして役立つ。

過去のトピックスはこちら

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。