数々の名車を手がけたエンジニア、ピーター・デンクによって生み出されたSpecializedの『Aethos(エートス)』。
既存のモデルには存在しない設計思想だったため、エートスについて語られるときは、わかりやく「軽さ」だけに注目されがちでした。でもその本質は、自転車のスタイルに多様性をもたらす全く新しいカテゴリのバイクだということ。
それを感じ取ったサイクリストは、すでにエートスを選んで自分に合った遊び方を楽しんでいます。本企画で取り上げるのは、そんなサイクリストたちのストーリー。
第1回は、サイクルコミュニティ「CC TOKYO」を運営する萩原氏のスタイルにフォーカスします。
萩原 武(@takeshihagi) 1975年静岡県生まれ。40歳目前にとある企画でトライアスロンリレーに出ることになり、バイク担当として初めてロードバイクに出会い楽しさを知る。その後数年で海外や日本各地のレース・イベントにも参加し、どんどんその魅力に取りつかれていく。 これまでファッションや服飾雑貨ブランドで、マーケティングやPRといったヒトとのつながりが大事な業務を数多く担当してきたが、自転車で繋がるご縁がもつ可能性を信じて独立。2020年にCC TOKYO(CYCLE COMMUNE TOKYO)を立ち上げ。 |
text & photo/Tats(@tats_lovecyclist)[PR]
1. コミュニティづくり
── まず萩原さんがコミュニティを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
萩原:これまで自転車歴7年の間に、競技からサイクリングまで色々な走り方をしてきた中で、自転車って本当に楽しみ方に制限がなくてずっと続けられるな、というのを実感していました。
でも周りを見ると、ふとやめてしまう人がいることに気が付いたんです。その原因のひとつに、「仲間がいないこと」がありました。せっかく自転車を始めたのに、仲間がいないことで続ける理由やモチベーションがなくなってしまう。仲間探しって本当に大変なので、そういう背景の人が気軽に集まれる場所があるといいな、というのがこのコミュニティを作ろうと思ったきっかけですね。
CC TOKYOコミュニティライドのワンシーン
会員制サイクルコミュニティ「CC TOKYO」。“会員制”というありそうでなかった枠組みの中、「CC TOKYO」は徐々に活動の場を広げ、今では10人以上のメンバーが集うコミュニティに成長している。
── 実はコロナ禍にスタートされたんですよね。
萩原:そうなんです。会社から独立してCC TOKYOの立ち上げを進めていたのが2年前で、いざメンバーを集めようとしたらちょうど緊急事態宣言が出てしまったんですね。当時はグループライドなんてもってのほかという状況で。
タイミングとしては最悪だったんですが、何もできないぶん、焦らずに準備するしかないなと(笑)。状況が落ち着くまでは、Webサイトを作り込んだりSNSを運用したりして、逆に始めるまでの土台がしっかりできたと思います。
実際にグループライドができたのはそこから半年後の2020年9月で、初期は5〜6人からのスタートでした。メンバーはSNS広告を使って募集をかけていたので、広告を見たことがある方もいるかもしれません。コロナ禍でもSNS上では発信を続けていたので、どんなことをやりたいのかというのがある程度わかってもらえた上で応募してもらうことができました。
2. “会員制”である意味
── 自転車のコミュニティでは会員制というのは珍しいですよね。それこそRaphaの「RCC」は有名ですが、独立系の会員制コミュニティはあまり聞いたことがありませんでした。
萩原:今は11人の方に参加いただいていますが、実はそんなに規模は大きくしていこうとは考えていないんです。僕の見える範囲でコミュニティを運営していきたいと思っていて、MAXでも15人くらいが良いと思っています。「どういう人に来てほしい」とかも気にしていなくて、自転車を始めたばかりの方にも、新しい自転車の楽しみ方を見出したいベテランの方にも遠慮なく参加してほしいな、と。
── 会費は月あたり1万円という設定ですね。
萩原:決して安くはない設定だと思いますが、これには理由があって、まず毎週ライドを企画する運営費に充てています。それだけでなく、月に1〜2回は外部からゲストを呼んで一緒に走っているんです。そのゲストへの報酬を会費から支払わせてもらっています。
定期的にゲストを呼んでライドを開催する
萩原:こうしているのは、自転車界にちゃんとお金が回るような流れをつくりたいな、という僕自身のささやかな啓蒙活動でもあります。
── すごく大事な取り組みだと思います。
萩原:例えばライドイベントのゲストとかは、お互いの関係性から無償で受けてしまうケースもあります。サイクリストも機材にはお金を使うけれど、フィッティングのような無形のものにお金を出すマインドがあまりない。
月1万という会費についても、それを高いと感じず、ちゃんとメンバーに還元されるような仕組みにしていきたいなと。だから今参加いただいているメンバーのみなさんは、それだけの価値を感じていただいています。
3. 走力差を埋めるために
── 実際にどんなライドをしていますか。
萩原:だいたい毎回7〜8人くらいのグループで、50〜100kmの距離を走ります。エリアはさまざまで、荒川や稲城を中心に毎回違うところへ行きますね。ルートは僕がつくることもありますが、近所の荒川起点になることが多いので、ほかのエリアはメンバーにもつくってもらっています。それぞれ得意な地域があるので、行き先に応じてルート作成を各メンバーで受け持っているかたちですね。
── 双方向でやっているのがコミュニティ感があって良いですね!
ちなみに7〜8人で走るとなると、走力差がどうしても出ると思いますが、そのあたりどうやってケアしていますか。
萩原:初期の頃は強度調整がうまくできずにグループがバラけてしまったことがありましたね…。そこから試行錯誤を繰り返しながら、コミュニティライドならではの走り方を見つけていきました。
今はパワーウェイトレシオ(PWR)を元にペースを作っていて、平坦は2倍、峠やアップダウンがあるときは3倍を目安にしています。
── 数値に優しさが溢れています(笑)。
萩原:(笑)。
あとははぐれないように、ルートを事前に配布して各自のサイコンに入れてもらっていますね。ただメンバーの中には、ライド中に強度を上げたくなる方もいるので、峠などに入ったら先行してもらって、あとから合流しています。
── なるほど。お話を伺っていると、萩原さんはすごくコミュニティの和を大事にしているというか、あまり自分を強く出さずに、ゲストやメンバーを引き立てているように感じられます。
萩原:確かに、僕自身が目立ちたいとはあまり思っていないんです。そうなったらコミュニティは立ち回らなくなると思いますし。やっぱり「自転車を続けて楽しい」と思ってもらいたいので、参加したくなる仕組みがあって、その中で僕が調整役を担うという立ち位置が一番良いんだと思います。
4. コミュニティを導くバイク
── そうしたコミュニティを導く萩原さんのバイクがエートス。
萩原:2021年の秋からエートスに乗っているんですが、こんなに乗っていて楽しいバイクは初めてです。
── これまではどんなバイクに乗ってきましたか。
萩原:ちょっと遡るんですが、僕は7年前にいた会社でホノルルトライアスロンに挑戦したことがロードバイクを始めたきっかけなんですね。
当初は「強く速く」というスタイルで、エンデューロレースに出たり、ニセコクラシックやツールドおきなわをターゲットにしてトレーニングを続けていました。だから選んだのもレースでより良い結果を出すためのバイクでした。
そこからだんだんと競技以外の走り方もするようになりましたが、どんなライドもレースバイクで十分楽しめると思っていたんですね。
ただ、ある時バイクが壊れてしまって、修理に出さなければならなくなった。そのときはもうCC TOKYOをはじめとして自転車に乗ることが仕事になっていたので、バイクを壊してしまうと仕事に穴が空いてしまうんですね。
だからもう1台、換えが効くバイクを買っておこうと探していたときに、エートスに出会いました。「純粋にロードライドを楽しむためのバイク」というコンセプトを知って、あ、これが一番自分に合ったバイクなんだと感じたんですね。
スペシャライズド AETHOS COMP – SRAM RIVAL ETAP AXS
完成車スペック
コンポーネント:SRAM Rival eTap AXS
ハンドルバー:Specialized Shallow Drop
ステム:Specialized Pro SL, alloy
サドル:Body Geometry Power Sport, Steel Rails
ホイール:DT Swiss R470 Disc
タイヤ:Turbo Pro, 700x26mm
価格:¥638,000(税込)
── S-WorksやProグレードではなく、Compグレードにしたのは。
萩原:運良く在庫があったというのもありますが、コミュニティライドではレース強度で踏まないので、ハイエンドバイクは必要ないんですね。であればCompで良いし、運用コストも下げられるというメリットもあります。
今はレースバイクとの2台持ちですが、実際にエートスに乗ってみるとこれが乗り心地良すぎて、ほとんどエートスにしか乗らなくなりました。
エートスに乗るまではフレームの剛性感とか正直よくわかっていなかったのですが、エートスはくっきりと「しなやかさ」というのが感じられます。身体に優しくて、でも走りは軽快で楽しい。コミュニティライドのスタイルにぴったりなんですよね。
── 完成車からパーツをどこか変更していますか。
萩原:一番大きなところはホイールで、「Alpinist CL」にしました。完成車のアルミホイールには少し重さを感じたので、カーボンの方が軽快になるだろうなと思って。「CLX」と迷ったのですが、価格差と期待できる効果に僕のライドスタイルをかけ合わせると、CLがベストという結論になりました。
Alpinist CL x ヴィットリア コルサ グラフェン2.0(28c)
クランクをパワーメーターに付け替えているが、トレーニングではなく主にグループライドのペース管理に用いている
ハンドル&ステムはフィッティングを受けた後にカーボン製に換装。Supacazのバーテープと、トップキャップ&エンドキャップのパープルが程よいアクセント
── ほかにカスタムなどの予定はありますか。
萩原:エートスは32cまでタイヤクリアランスがあるので、 2ホイール体制にしようと思っています。今のAlpinist CL(タイヤ28c)はそのままに、完成車に付属していたDT Swissのホイールに32cを付けて、グラベルを走るときに付け替えられるように。
これまで28cで多摩湖や裏尾根幹のグラベルを走ってきたのですが、エートスが懐の深いバイクだということがわかって、今度はタイヤの違いで自分自身のスタイルの幅を広げたいな、と。
── コミュニティライドでグラベルに行くのも楽しそうですね。
萩原:その方面もこれから本格的にやっていきたいですね。
グラベルも楽しめるポテンシャルを持つAethos
5. スタイリングとAethos
── 普段のライドではどんなスタイリングを意識していますか。
萩原:独立する前はずっとファッション系の仕事をしてきたので、社会人の最初の頃は給料をすべて洋服につぎ込むくらい服好きでした。だから着るものには気を遣う方だと思うのですが、特定のブランドにこだわってはいません。Raphaのカーゴパンツは好きで何着も持っていますが、上は色々なブランドを着ています。
どちらかというと、色の組み合わせやサイジングを気にしているくらいですね。適切な組み合わせで大人な感じに見えれば良いかな、と思っていて。
── 今日のスタイリングも萩原さんの雰囲気や自転車にすごくフィットしています。
萩原:ありがとうございます。エートスの良いところって、どんなウェアにも合うところなんですよね。フレームはシンプルで、ロゴもほとんど目立たない。
── よくエートスに対して「他のバイクのようにダウンチューブにロゴが入っていてほしい」と聞くことがあります。
萩原:そういうデザインが好きな方はいると思いますが、個人的には何も入っていなくて全然良いです。エートスらしさって、レースバイクのように自己主張が強いのとは正反対だからでしょうね。コンセプトだけじゃなく、デザインもライドフィールもそう。
「踏みたくなる」ではなく「楽しみたくなる」。「速く走りたくなる」のではなく「ずっと乗っていたくなる」。エートスだからそんな気持ちになれるんだろうなってこの半年以上乗っていて強く感じています。
エートスに乗り始めた頃から、カメラも楽しむようになった萩原氏。「走っている姿を撮ると、コミュニティメンバーに喜んでもらえる」という言葉が彼の人柄を表しているよう。
色々な走り方を実践し、色々な人と交わってきたからこそ実現できる、今のコミュニティをベースとした大人なライドスタイル。エートスを乗りこなしながら、人と人との“和”を創造し、これから先もさまざまな出会いや価値を生み出していくであろうことが非常に楽しみです。
CC TOKYO(公式サイト)
萩原 武(Instagram)
Specialized Aethos(公式サイト)
執筆・編集・写真/Tats(@tats_lovecyclist)
[PR]提供/スペシャライズド・ジャパン
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